今後30年で4分の1が消失、陸と水に住む昆虫の生息数の変化

自然
(Sander van der Wel/Flickr)

世界の1,676の地点で行われた166件の昆虫に関する研究をまとめたデータは、陸に生息する昆虫の数が年々減少しているのに対し、淡水に生息する昆虫の数は増えていることを示しました。

これまでで最大規模となる昆虫の動向調査は、昆虫種の健康状態が考えられていたよりもはるかに複雑であることを明らかにしています。

 

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陸生昆虫の数は減っているが水生昆虫の数は増えている

 

Scienceに掲載された研究は、過去に行われた昆虫に関する研究結果をまとめ、そこから昆虫の生息数の推移を導き出しています。

蝶、アリ、バッタなどの陸に生息している昆虫の数は、年間で0.92%の減少を示す一方で、ユスリカやカゲロウなどの淡水(水際)に生息している昆虫の数は、年間で1.08%の増加をみせました。

陸生昆虫の減少は10年で9%程度になりますが、この数字は決して楽観できるものではありません。

 

研究著者の一人で、ドイツ統合生物多様性研究センター(German Centre for Integrative Biodiversity Research)の、ロエル・ファン・クリンク(Roel Van Klink)博士は、「これは非常に深刻な数字であり、今後30年の間に昆虫の4分の1がいなくなることを意味する」と述べ、また「この数字は平均であるため、実際はもっと状況の悪い地域もある」と指摘します。

陸生昆虫の減少は、生息地の破壊や農薬、光害などのほかに、車との衝突によっても引き起こされています。

クリンク博士は、「多くの昆虫は飛ぶことができ、それらは車のフロントガラスによって破壊される」と述べ、多くの人が抱いている、昆虫が減少しているという感覚は間違いではないと強調しました。

またさらに、「昆虫の大部分は、土の中、木の中、水の中といった目立たない場所にいる」と説明し、分析結果は、昆虫が年々減少していることをはっきりと示すものだと述べています。

 

水生昆虫の数は増えている (25701/Pixabay)

 

陸生昆虫はヨーロッパで少なくなっており、2005年以降では特にひどくなっています。

一方で、水の近くに生息している昆虫の数は、北ヨーロッパ、米国西部、ロシアで増加傾向にありました。

この理由について研究者は、汚染された河川や湖を保護するための法律が昆虫の回復に寄与していると考えています。

しかし水辺に住む昆虫の増加は、昆虫界全体を救うわけではありません。

クリンク博士は、「水生昆虫は、昆虫全体のほんの一部でしかない」とし、その数は10%にも満たないと指摘します。

そして、地球上に存在する淡水の面積は陸地全体の一部に過ぎないため、水生昆虫の増加では陸生昆虫の数を補うことはできないと話しています。

 

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多くの研究結果は、世界中の昆虫が減っていることを示していますが、地域によっては生態系が維持されている例もあります。

研究著者の一人であり、アメリカで30年以上にわたって蝶の研究を続けてきたアン・スウェンゲル(Ann Swengel)氏は、「私たちは保護区を含む多くの地域で昆虫の減少を見てきた」と話す一方で、「蝶が元気に活動を続けている場所も観察してきた」と付け加え、狭い地域の中であっても、昆虫が減少している場所とそうでない場所があると指摘しました。

スウェンゲル氏は、「昆虫の増減を理解するには、種ごと、場所ごとに何年もの歳月と多くのデータが必要だ」と述べ、継続的な研究の重要性を強調しています。

 

研究者たちは、水生昆虫の増加が法律の制定に関連していたことから、同じような対処によって陸生昆虫の個体数も回復できるのではないかと考えています。

 

 

 


 

 

かなで
かなで

自然保護区にいる昆虫はそれほど数が減ってないみたいだよ

ふうか
ふうか

規制によって水生昆虫が回復したのなら、やり方次第で陸の昆虫を救うこともできるかもしれないな

 

References: BBC