アメリカのイエローストーン国立公園のある間欠泉で、約60年ぶりに大きな噴出が起こり、過去に泉に投げ込まれていたいろんなものが一緒になって噴きあがってきたそうです。
イエローストーン国立公園は、その広さと様々な景観や自然、動植物の宝庫として知られていますが、地底から噴き出す熱水泉や間欠泉が数多く存在することでも知られています。
グランド・プリズマティック・スプリングや、モーニング・グローリー・プールなどは一度は目にしたことがあるかもしれません。
グランド・プリズマティック・スプリング
モーニング・グローリー・プール
間欠泉から一体どんなものが噴き上げられたのでしょうか。
またどうしてそんなところにそんなものがあったのでしょうか。
ちょっと調べてみることにしました。
わーい!いろんなもの拾っちゃったよー!
か、かなでちゃん……ちゃんと持ち主に返さなきゃダメなんだよ?!
えー?でもでも、かなでが拾ったんだから、かなでの物なんだよー♪
ちょっと見せてみて……えっと……これはかなり年代物っていうか、ボロボロっていうか……ゴミ?
なにして遊ぼうかなー!楽しみー!
イエローストーン国立公園について
名前は何となく聞いたことがある方も多いと思いますが、ここでざっと基本情報をおさらいしてみたいと思います。
イエローストーン国立公園はモンタナ州北部を中心として広がる広大な地域で、様々な温泉や間欠泉による観光スポットが散在しています。広さは大体東京都の4倍ほど――とてつもない広さです!
またグリズリーやオオカミ、アメリカバイソンなどの群れが生息する巨大な生態系を有しています。
イエローストーン地区は北アメリカ最大の火山地帯で、その活動によって数百か所の地下から温水を噴出させています。
間欠泉で特に有名なのが「オールド・フェイスフル・ガイザー」でしょう。
オールド・フェイスフル・ガイザー
常に決まった間隔で温水を噴出させることからこの名前がついたそうです。英語の「faithful」は「忠実な」という意味があります。
1回で14000~32000リットルもの温水を、高さ30メートルから50メートルにわたって噴出させるというのですから、自然の力というのはとてもすごいですね。
またイエローストーン国立公園は1978年から登録が始まった世界遺産の第1号でもあります。
世界遺産の登録基準では、その自然と生態系の重要性や、地球の歴史を知るうえでの貴重な資料という観点から選ばれています。
昨今、自然破壊やテクノロジーの発達で、かつてあった情景が様変わりしてしまうことが少なくありませんが、イエローストーン国立公園のような大自然を後世まで保存し伝えていくことは、いまを生きる私たちの大きな使命の一つなのかもしれません。
「イア・スプリング」は耳の形をした間欠泉
さて今回の調査対象は、一風変わった見た目の間欠泉です。
その名もズバリ「イア・スプリング(Ear Spring)」!
イア・スプリングはアッパー・ガイザー・ベイスンにあり、近くには上で紹介したオールド・フェイスフル・ガイザーがあります。
形が人の耳に似ていることからこう名付けられたそうです。
他の間欠泉と同じく定期的に温水を噴出させていたのですが、2018年の9月15日に、1957年以来最大となる大きさの噴出をしたことで注目されました。
その高さは6メートルから9メートル!
そしてさらに注目をされたのが、温水以外のものも吹きあげたことでした。
グリズリーの標識やシガレットホルダー、さらにはドクペの缶まで!
イエローストーンのパークレンジャーが、今回のイア・スプリングの噴出の際に、様々な種類の人工物が一緒に吹きあげられたことを報告しています。
引用:Yellowstone National Park/Facebook
報告動画では、グリズリーの危険を伝える標識、コンクリートブロック、シガレットホルダー、コイン類、ポラロイドカメラのケース、はたまたビール缶やドクターペッパーの缶、赤ちゃんのおしゃぶりまでもが並べられています。
コンクリートとグリズリーの標識
ポラロイドカメラのケースやおしゃぶり
コイン類や空き缶、そしてドクペの缶も!
そのどれもが高熱の泉の中にいたことを示すように、変形したり、溶けたりしています。
日本の神社ではお賽銭を投げますし、自然豊かでご利益のありそうな場所でもコインを投げることがあります。
しかしどうしてここまでいろんな種類のものがこのイア・スプリングに投げ込まれていたのでしょう?
あー!かなでが拾ったのとおんなじものがあるよー!
どれどれ……ってこれはただの空き缶だよ?
ぶーっ!これはあるところに持っていくといろんなものと交換してくれるんだよー!とっても貴重なんだからねー!
えーっ?!そんなものどこから拾ってきたの……ってこれ、せつなちゃんの貯金箱じゃ?
その昔、ハンカチを落とすと綺麗になって戻ってきた
イエローストーン国立公園には数多くの熱水泉や間欠泉がありますが、そのなかで過去にとても有名になった泉がありました。
その名を「ハンカチ・プール(Handkerchief Pool)」といいます。
なんかヘンテコな名前ですが、これにはその由来となった出来事が大きく関連しています。
「ハンカチ・プール」は、上に挙げた「オールド・フェイスフル・ガイザー」や「モーニング・グローリー・プール」と並ぶ一大観光スポットでした。
いまやその存在すら忘れられている「ハンカチ・プール」が、なぜ絶大な人気のある後者と同じくらいに有名になったのでしょう?
それはある観光客のちょっとした行動が話題になったからです。
それは――汚れたハンカチを泉に投げ入れたこと、でした。
どういうつもりでそうしたのかはわかりませんが、ハンカチを投げ入れた途端すぐにその観光客の予想を超えたことが起こり始めます。
ハンカチは数分の間泉に飲み込まれた後、次の噴出と一緒に浮かび上がってきました。
そしてなんと!汚れたハンカチはピカピカになっていたのでした!
この現象は瞬く間に全米に広がり、観光客は「ハンカチ・プール」に押し寄せました。
そして最初は同じようにハンカチを投げ入れていたのですが、人というのは、他人と違うことをしてみたくなる生き物のようで……次第にハンカチ以外のものも投げ入れるようになりました。
コイン、割れた瓶、岩、髪留め、馬の蹄鉄……とにかくありとあらゆるものが泉に投げ込まれました。
間欠泉は地熱で温められた地下水が定期的に噴き出す仕組みですが、空高くまで上昇するには圧力が必要になります。
その圧力は、地熱と、泉の持つ空洞の大きさで決まります。
ちょうど水道の蛇口に付けられたホースの先を握ってみるのと同じようなことです。
いわば自然のホースの口のような間欠泉に、いろんなものを投げ込むと一体どうなってしまうのか……ちょっと考えてみればわかりますよね?
そう――「ハンカチ・プール」はものが詰まってしまい、その活動を休止してしまったのでした。
そんなにいろんなものを投げ込んでたら泉のほうも疲れちゃうんだね、きっと
かなでも投げたかったよー!
だめだからね?その辺の池とか川にものを投げたりしちゃ
あなたの落とした物はコインですか?それともマナーですか?
パークレンジャーの推測によると、今回「イア・スプリング」からいろいろな物が見つかったのは、過去の「ハンカチ・プール」での慣習の名残ではないか、ということです。
あまりにも「ハンカチ・プール」の洗濯機能が有名になったせいで、泉とみればものを投げずにはいられない!という観光客がたくさんいたのでしょう。
どこの国の観光施設でもそうですが、観る側がしっかりとマナーを守り、そこにあるものをそのまま次代につなげていく――そういう姿勢や考え方がこれからますます必要なのではないか、そんな気がします。
パークレンジャーは動画の中で、泉にものを投げ入れないように、と注意を促しています。そうしなければ泉は死んでしまうから――かつて観光客を呼び寄せ、いつも話題の中心にいたあの「ハンカチ・プール」のように……。
美しい自然は私たちに生きる力と喜び、そして感動を与えてくれます。
そんな自然からの贈り物を、こちらの勝手な都合で台無しにすることのないようにしていきたいものですね。
あれ?私のひそかに貯めていた貯金箱がない……
あなたの落としたものはこの空き缶ですか?それともジャラジャラと音のするこちらの空き缶ですか?
あー!それは私の大事なへそく……いや、活動資金を入れた貯金箱!
はいっ!このジャラジャラした空き缶を差し上げますー!
まったくかなでは油断も隙もない……ってなんだこれは!?ただの石ころじゃないか!!
うー!このコインで何が買えるかなー♪楽しみだなー♪
こらっ!かなで!それは私のだーっ!!
それでは「イエローストーン国立公園」と間欠泉「イア・スプリング」から出てきたものについての調査報告でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました!