人類はまた一つの偉業を成し遂げたようです……偉業といってもあまり褒められるものではありませんが。
5月11日、カリフォルニアにあるスクリップス海洋研究所は、地球の大気中の二酸化炭素濃度が惑星の歴史上最も高い値を記録したと発表しました。
CO2濃度は415.26ppmで、この数値は人類が誕生してからはもちろんのこと、長い地球の歴史の中で最も高い値となります。
過去にCO2濃度が300ppm近くにまで上昇する時代はいくつかありましたが、それをはるかに越える400ppm台というのは歴史上初めてのことです。
ここ100年のCO2濃度の上昇率はまさに“異常”
1958年に大気中の二酸化炭素濃度を測定するプログラムを考案した科学者であるチャールズ・デービッド・キーリング(Charles David Keeling)氏は、ハワイにあるマウナロア観測所での活動により、二酸化炭素の濃度が年々上昇しているのをグラフに表し世界の人々の関心を集めました。
2005年に亡くなった後も彼が作ったグラフはキーリング曲線(Keeling Curve)として受け継がれています。
キーリング氏の息子の一人で現在スクリップス海洋研究所のCO2ディレクターであるラルフ・キーリング氏は、二酸化炭素濃度の平均成長率は高いままだと述べます。
昨年からのCO2濃度の増加は最近の平均である2.5ppmよりさらに増え3ppmになるでしょう。おそらく進行中の化石燃料の使用に加えて、穏やかなエルニーニョ現象の影響があります。
ここ10万年の間でCO2濃度が300ppmを越え始めたのは1910年頃からになります。
下のグラフが示すように80万年の間に300ppmに近い数値を記録した時代はいくつかありました。
過去80万年の二酸化炭素濃度のグラフ。何度か300ppm近くにまで上昇した時代がある。ちなみに右端の突き抜けた線は誤植ではありません。 Image:The Keeling Curve
しかし1910年以降の100年間で上昇したCO2濃度はこれまで見たことがないほど高いものになっています。
1910年以降急激な濃度上昇がみられる。 Image:The Keeling Curve
大気中の二酸化炭素が増えるとますます多くの熱が地球に閉じ込められるようになります。
かつて地球が暑かった時代には南極に木が生えていました。
しかし現在の急激なCO2濃度の上昇は南極に再び木が生えるのを待ってくれるほど悠長なものではありません。
この先も上昇が続けば、地球は植物どころか人間も住めなくなる星になる可能性があります。
キーリング氏はこの急激な濃度の上昇についてこう述べています。
私たちは化石燃料を燃やし続けています。そして生産された二酸化炭素は大気中に蓄積し続けます。単純なことです。
化石燃料は私たちの生活に溶け込んでいるため、二酸化炭素の影響を知っていたとしてもすぐにその使用をやめることはできません。
各国の政府も温暖化対策に重い腰をあげていますがなかなかうまくいっていないようです。
まだ大丈夫……そう思っていられるのもあと少しだけの可能性があります。
ここ100年あまりで地球の歴史を塗り替えてしまった私たちは、一度立ち止まり、真剣に二酸化炭素の排出について考える必要があるのかもしれません。
References:ScienceAlert,The Keeling Curve