2019年1月1日、ハワイのオアフ島固有のカタツムリ種Achatinella apexfulvaの確認されている最後の1匹であるジョージが亡くなりました――14歳でした。
“黄色い先端”という意味合いを持つこのカタツムリはオアフ島の森林に住む固有種でしたが、環境変化や天敵などによって生息域が急速に狭められていきました。
研究者によって1997年に捕獲された10匹のカタツムリのうちの2匹がジョージの両親でした。
ジョージが亡くなったことでAchatinella apexfulvaは絶滅したと考えられています。
ハワイの政府機関であるDLNR(Department of Land and Natural Resources)のDavid Sischo氏は1月1日にジョージが死亡したことをTwitterで報告しました。
On New Year’s Day, we said farewell to a beloved snail, the last of its species. Learn more about George … https://t.co/2k6LRKeTRC #extinction pic.twitter.com/NfzWv577xZ
— DLNR (@dlnr) 2019年1月4日
1997年に飼育と保存のために研究室に運ばれてきた10匹のカタツムリから、何匹かの赤ちゃんが産まれました。
しかしジョージ以外は全て亡くなってしまい、今回のジョージの死で1つの種が地球上から姿を消したことになります。
(ジョージの名前は、ガラパゴス諸島の最後のピンタゾウガメで、2012年に亡くなったロンサム・ジョージからきています)
Achatinella apexfulvaを含む殻の先端が黄色のカタツムリは、1950年代までは数多く生息していました。
オアフを追われたジョージとは別の種のカタツムリ。Image Credit:David Sischo
しかし害虫からの農産物被害を防ぐ目的でアメリカから持ち込まれたrosy wolfsnail(ヤマヒタチオビ)によって捕食され、急速にその数を減少させていきました。
アフリカマイマイの駆除のために持ち込まれましたが土地固有の種も食べてしまい問題になっています。
元々森の中に生息していたAchatinella apexfulvaですが、ジョージはその生涯を森ではなく研究室で過ごしました。
世界でただ1匹となった彼の元には多くの見学者が訪れました。
新聞や雑誌、ネットメディアで特集され、何百人もの子供たちがジョージを見に研究室を訪れました。
ジョージは雌雄同体でしたが繁殖するにはパートナーが必要であったため絶滅は免れない状況でした。
そのため2017年に、無菌のカミソリを使ってジョージの足から2ミリメートルの組織が収集されました。
現在サンディエゴ動物園で冷凍保存されているジョージの組織は、将来種の復活のために利用される可能性があります。
ジョージの死は悲しいことですがSischo氏は未来を前向きに捉えています。
彼の働いているオアフの研究室には別の固有種のカタツムリが何千匹も居住しています。
Sischo氏は彼らを繁栄させたいと望む森林に大人のカタツムリたちを移殖する活動を始めました。
これまでのところその新しい住居については“秘密”だそうです。
Sischo氏は希望する森林に大人のカタツムリを移植しています。Image Credit:David Sischo
ジョージの組織は冷凍保存されているので、いますぐにとはいきませんが、将来ジョージが再びオアフに住むようになるかもしれないことをSischo氏は期待しています。
人間とは直接関わりがない小さな種でも、地球からその存在がなくなってしまうことを知るのは悲しいものです。
ジョージの死は、人間を含めた生き物たちがもっと平和で仲良くするよう私たちに訴えかけている気がします。
14年間ハワイのマスコット的存在だったジョージ君、本当にお疲れ様……そしていままでありがとう!
References:theguardian,Twitter