全世界で880万人に影響、大気汚染によって3年短くなった人類の平均寿命

自然
(jwveinPixabay)

ドイツのマックス・プランク研究所の科学者チームは、PM2.5などの人体に影響を与える微粒子などの大気汚染物質によって、世界の平均寿命が約3年短縮していると報告しています。

過去のいくつかの研究においても、大気汚染物質は人の健康に影響を及ぼし寿命を縮めることが示されています。

新しく行われた研究は過去の研究をさらに広げ、世界の地域ごとや病気の種類などからより正確な大気汚染の実態とその影響を分析しています。

 

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大気汚染は喫煙よりも平均寿命を短縮する

 

Cardiovascular Researchに掲載された研究は、大気汚染が人体に与える影響や、それによる病気の発症および死亡率などについて分析を行った結果、屋外の大気汚染物質により世界の平均寿命が2.9年短くなっていると報告しています。

大気汚染を原因とする世界の死亡者数は、研究者の推定の2倍である880万人にのぼりました。

大気汚染は、他の要因――喫煙、暴力、エイズ、寄生虫やその他の媒介生物による病気――よりも、平均寿命の短縮に大きな影響を与えました。

研究著者の一人でマックス・プランク化学研究所のヨス・レリフェルト(Jos Lelieveld)教授は、この結果は全くの予想外であり、大気汚染による平均寿命の損失は他の多くの危険因子よりもはるかに大きく、それは喫煙以上であると説明しています。

 

研究者は、化石燃料を元にした大気汚染を減らすことができれば、年間で550万人の早期死亡を回避できるとしていますが、この効果は国や地域によって大きく異なります。

東アジアでは240万人の死亡を回避でき、これはこの地域で失われる寿命3.9年のうちの3年を取り戻す結果になります。

一方でアフリカでは、年間でわすが23万人しか死亡数を減らすことができず、取り戻せる寿命も3.1年のうちの8カ月分だけしかありません。

さらにオーストラリアに至っては、大気汚染物質の削減が平均寿命を延ばすことにほとんど影響を与えません。

これはアフリカの大気汚染が主に粉塵によるものであることと、オーストラリアが大気汚染対策に力を入れていることが理由です。

また分析では、年齢が高くなるほど大気汚染による影響を受けやすいことが示された一方、アフリカや南アジアでは乳幼児も大気汚染によって死亡していることが明らかになっています。

 

大気汚染による死亡者の病気の種類については、冠動脈疾患が最も多く、全世界で280万人が死亡し、失われる平均寿命の28%を占めました。

肺がん、慢性閉塞性肺疾患、および下気道感染は、合わせて年間で260万人の死亡者を出しました。

研究著者の一人でドイツのマインツ大学のトーマス・ムンツェル(Thomas Münzel)教授は、肺は大気汚染の第一の標的であるため、各国の政府は、心血管疾患の危険因子に大気汚染を含める必要があると指摘しています。

 

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研究は全ての大気汚染物質を分析したわけではないため、結果は非常に限定的なものです。

研究者は、平均寿命の短縮に関わる病気が他にもあるかもしれないことを認めつつも、今回の結果は、世界がより低いレベルの排出規制を必要としていることを浮き彫りにしたものであると強調しています。

ムンツェル教授は、「世界の人口の91%が汚染された空気を吸っている」と指摘したうえで、都市計画の見直しや医療の改善、さらには大気汚染による健康被害を緩和する新しい薬の開発などによって平均寿命を改善することはできると話しています。

 


 

 

ふうか
ふうか

化石燃料が主な原因だとしても使うのをやめるのはそう簡単なことではないぞ

しぐれ
しぐれ

空気を汚さないエネルギーについて考える時期が来ているのかもしれないね

 

References: The Guardian