気候変動は人間を共食いにさせる――食料不足がもたらすモラルへの挑戦

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気候変動は将来人間を共食いへと向かわせるかもしれないと一部の科学者たちが指摘しています。

共食い――人間が人間を食べること(カニバリズム)――は道徳的にも法律的にも禁忌です。

しかし気候変動とそれがもたらす食料不足は人間に究極の選択をするよう迫るかもしれません。

 

共食いは人類のモラルへの挑戦です。

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気候変動による食料不足は人間を共食いにさせる

 

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行動科学者のマグナス・ショダールンド氏はストックホルムで行われた講演で来場者に対し、“人間の肉を食べることを想像できますか”と問いかけ、このまま気温の上昇が続けば農業が打撃を受け食料不足になる可能性があり、人間の栄養について何か代わりとなるものが必要になるかもしれないと述べました。

ストックホルム経済大学の消費者マーケティング学科の教授であるショダールンド氏は、栄養科学や世界の食料供給に関する専門家ではありませんが、「人間を食べる」といった究極の選択に迫られた際の人間の心理的反応について研究しています。

同氏によると気候変動が農業を壊滅させ世界が食料不足に陥った場合、代替食物としてバッタやワームといった昆虫が選択肢に挙がると同時に、人間(死んでいる人間)もそこに含まれる可能性があり、将来人間は共食いをタブーとはみなさないようになるかもしれないと語りました。

同氏はスウェーデンのテレビ局に対し「食べてみても構わないと思う」と、共食いの未来がやってきた時に自らがどう反応するのかについて話しています。

 

人類を存続させるために共食いが必要になるという考え方は新しいものではありません。

2018年には進化生物学者のリチャード・ドーキンス氏が、実験室でヒトの細胞を培養し食料とする考えを発表し物議をかもしました。

 

共食いが究極的な選択肢であることは現在に生きる人たちの共通意識です。

科学者たちが何と言おうと人としてのモラルを失うことがあってはいけません。

気候変動に関する事実をメディアが正確に伝えられるように支援を行っている非営利団体「End Climate Silence」のディレクター、ジュヌビエーブ・グエンサー氏は、「共食いを気候変動の解決策として示唆することは、気候変動を否定するのと同じくらいたちの悪いものだ」と述べ、「もし共食いによって食料不足を管理できると考えるならば、それは私たちの文化全体が野蛮に陥っていることを意味する」と、共食いという考え方そのものを痛烈に批判しました。

 

ショダールンド氏やドーキンス氏の共食いに関する提案は一種の思考実験であり、気候変動がもたらす影響についてあまり実感がわかない人たちにとって事の深刻さを気づかせるきっかけになります。

しかし本当に共食いのない時代が来ないと断言できるのでしょうか?

 

世界の気温が上昇すると入手できる総カロリーは確実に減少する

 

実際このまま気候変動により世界の気温が上昇しつづけると、洪水や干ばつが頻繁に起き、暑さによる農作物の被害も極端なレベルで発生するようになります。

農業従事者は確実に現在よりも作物の栽培に苦慮します。

人間の消費カロリーに関するある予測によると、今後10年もたたないうちに1人あたり年間約28,000カロリーが不足します。

28,000カロリーは健康な大人の男性の10日分以上のカロリーです。

たかが10日と考えてしまいますが、これは地球に住む全ての人に当てはまる数字ですからどこかで必ずしわ寄せが出てきます。

 

人間は食べるために“あらゆること”をしてきました。

どんなに手を尽くしても食料にありつけなかったとしたら、最後に残るのはモラルではなく純粋で原始的な食欲だけです。

 

将来の人類が共食いしないために

 

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しかし私たちには共食いを実行する前にやれること(やらなければならないこと)があります。

国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の最新の報告では、現在世界中の全ての食料の4分の1が無駄になっています。

食料の収穫、保存、包装、輸送などの方法を改善することができれば、こうした無駄に捨てられる食料を減らすことが可能です。

また気候変動の影響を抑えるためにできることもあります。

IPCCの報告書では排出される温室効果ガスのうち23%は、農業、鉱業、伐採などを通じて人間が土地を利用する方法からきています。

森林破壊や無駄な耕作をやめ土地の利用法を改善することは、温室効果ガスの排出量を減らし気候変動による影響から地球を守ることにつながります。

 

一方で人類の歴史を振り返ると、胃を満たすために野蛮な方法に頼っていた時代があったことも確かです。

今年の4月に発表された研究は、西ヨーロッパに住んでいたネアンデルタール人に共食いをしていた痕跡があることを突き止めました。

10万年以上前に起きた劇的な気温の上昇は大型の哺乳動物を一掃し、それまで食料であったバイソンやマンモス、トナカイなどが死滅したことで食べるものがなくなり、ネアンデルタール人は人間同士で争うようになりました。

また戦争や儀式など限定的な状況においては、世界各地でカニバリズムが行われてきたことも事実です。

 


 

現代社会では(一部の未開の地域を除けば)共食いの習慣は残っていないとされています。

しかし本当に食料が手に入らない時代が来たら人は変わってしまうかもしれません。

 

これについてグエンサー氏は、共食いを検討するようになったとしたら、既にその時代の人間社会は混乱状態にあると述べます。

 

食料源として人間を見るようになったとしたら私たちはもっと大きな問題を抱えていることになります。それは気候変動の問題を解決できなかったことを意味しています。

 


 

気候変動の問題に対しては各国でその解決に向けての熱意が異なっているのが現状です。

経済や雇用など人間の生活に密接に関わる分野だけに関係者たちは長い間足踏みを続けています。

しかし気候変動は待ったなしです。

人間がお互いを食料とみなす恐ろしい時代の到来を回避するには、今から行動を起こす必要があります。

 

 

 

References:BusinessInsider

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