観葉植物には不思議な力があります。
室内に植物があると人はそこに癒しと安らぎを感じます。
誰もがアマゾンなどの森林地帯が二酸化炭素を吸収し、植物が有害な化学物質をろ過してくれているものだと考えています。
数十年前、ある研究結果が元で観葉植物に対する一つの神話が生まれました。
それは“観葉植物が空気を浄化する”というものです。
確かに締め切った部屋に植物があると淀んだ空気もきれいになる感じがします。
しかし本当のところはどうなのでしょう?
改めて行われた調査によると、観葉植物の空気を浄化する能力は、部屋全体をきれいにできるほどではありません。
植物の能力への誤解を生んだある研究結果
米国ドレクセル大学の環境エンジニアであるマイケル・ウォーリング氏たちが行った研究は、過去の植物に関する神話を再調査しています。
その神話の出どころは、1989年にNASAによって行われた研究でした。
研究著者は当時の宇宙ステーション内で行われた、癌の原因となる化学物質が植物によってろ過されるのか、という実験を元に、植物には有害物質を除去する力があると結論づけました。
実験は1立方メートル(一辺の長さが1メートルの正方形の箱)という限られた空間の中で行われたものですが、その中で起きたことは人々を驚かせるのに十分なものでした。
箱の中に置かれた植物は有害物質を1日のうちに70%も除去しました。
この研究結果は瞬く間に世界に広まり、今でも多くの人が、観葉植物に空気を清浄する能力があると信じています。
しかしウォーリング氏はこれがよくある誤解だと話します。
植物は素晴らしいものですが、実際には屋内やオフィス環境に影響を与えるほど空気をきれいにするわけではありません。
宇宙ステーションで行われた実験は非常に限られた空間でのものです。
これをオフィスや一般的な家庭に当てはめるためには、さらなる調査が必要です。
植物に空気を清浄する能力はあるが、部屋をきれいにするほどではない
photo by Sarah Pflug on BURST
ウォーリング氏たちは過去の植物と空気清浄に関する研究データを調べ、植物には室内の空気を浄化するほどの能力がほとんどないことを突き止めました。
調査ではまず、CADR(クリーンエア供給率)と呼ばれる、空気清浄機によってろ過された空気量を示す指標を用い、過去の研究結果がどれだけ室内の空気の清浄に役立つのかを分析していきました。
すると過去の研究著者のほとんどが実験室での結果だけに集中し、環境工学の点から植物と室内の空気の関係について見ていない傾向にあることがわかりました。
また使用していた機器の精度が低く、植物の空気清浄能力が過剰に測定されていた例もありました。
これは研究者が、室内の空気のろ過率に植物がどのように作用しているのかについて間違った評価をしていたことを意味し、ありていに言えば、空気清浄のために植物に期待するよりは窓を開けた方が早い場合がほとんどであったということです。
調査では196ある論文のうちの2つだけが、実際の室内の空気を清浄するには植物では不十分である可能性に言及していました。
ウォーリング氏たちは過去の研究の照会だけでなく、実際に自分たちで実験も行っています。
それによると、空気の流れが極端に少なくCADRを最大限考慮した建物であっても、1平方メートルあたり1個の観葉植物では、最大で20%の空気清浄率にしかなりませんでした。
これはNASAの研究結果である70%と比べればかなりの落ち込みです。
ウォーリング氏はこの結果をもって、植物の空気清浄能力について研究を続けるべきではない、とは考えていません。
むしろ今回の検証は、どんな科学的発見であっても誤解されたり間違えたりする場合があることを示した例だと述べます。
これは時間の経過とともに科学的発見が誤解される例と言えます。しかし真実に近づくためには絶えず再調査をし、私たちの周りで実際に何が起こっているのかについて常に疑問を抱かなければならないという例でもあります。
ウォーリング氏は研究者とメディアが調査結果について誇張せず、実生活の環境に合わせた形で伝える必要があると話しています。
ウォーリング氏の試算では、通常の家やオフィス(140平方メートル)で窓を開けるのと同じだけの空気清浄能力を発揮するためには、680個の観葉植物が必要です。
この結果からすると、部屋の空気をきれいにする目的で観葉植物を置くのはよい選択肢とは言えません。
しかし植物が癒しや安らぎを与えてくれるのも事実です。
もし部屋の空気が淀んでいることに気づいたなら、カーテンを開け窓を全開にするのをお勧めします――そして一緒に観葉植物の様子も見てあげましょう。
植物が部屋にあるっていいよねー!
たくさんの空気をきれいにできなくても癒される……それが植物のちから
References:ScienceAlert