水を入れた容器にカエルを入れ徐々に熱していくとカエルは緩やかな温度変化を知覚できずに死んでしまう……実際にはカエルはすぐに跳び出すそうですが、この現象を「茹でガエル効果(boiling frog effect)」と呼びます。
これは人間は悪い状況下でもその優れた適応能力ゆえに問題を先延ばしにする傾向があることを戒めるちょっとした作り話です。
しかし科学者たちによるとこの茹でガエル効果に似たようなことが私たちの身の回りで実際に起きています。
今世界は猛烈に暑くなっています。
茹でガエル効果と天候に対する“通常”という感覚
カリフォルニア大学デービス校の気候科学者Frances C. Moore氏は、現在の異常気象がもたらす感覚について私たちが一種の慣れを感じていることに注目しました。
現代は前例のない気候変動に直面していますが、私たちのほとんどはそれがどれだけ悪いことなのかを理解していません。
Moore氏はこの現実と人々の感覚との差を茹でガエル効果になぞらえます。
これは本当の茹でガエル効果といえます。人々はこれまで避けたいと思ってきたものに慣れてきています。
Moore氏と彼女のチームは人々が気温の変化についてどのような感情を抱いてきたのかをできるだけ過去にさかのぼって調査することにしました。
2014年3月から2016年11月までの間の天気に関する20億以上のツイートをサンプリングし人々の温度に対するセンチメントを数値化します。
そしてそれを1981年から1990年の天気データと比較しました。
チームが発見したものは極めて予想の範囲内でした。
人々は自分の住む地域において珍しい天気の場合につぶやく(ツイート)傾向がありました。
例えば寒い地域に住んでいる人はいつもより暖かかればそれをつぶやき、暑い地域の人は温度が低い場合につぶやいていました。
しかし研究チームが着目したのは人々がつぶやくために参照している過去の記憶です。
いつもより暑いか寒いかを判断するためには過去の基準が必要となります。
調査結果はその基準値が徐々に変化していったことを示しました。
最初異常だと思われていた気温の変化も、およそ5年の間に繰り返されることで当たり前の感覚になりツイートの回数が減っていったことがわかったのです。
産業革命以降地球の気温の上昇幅はそれ以前と比べ明らかに大きくなっています。
ここに人為的要因があることは明確ですが、今回の結果はそれに対する公衆の認識を不明瞭にしてしまうものです。
研究は私たちが「通常」だと思う過去の基準が大体2~8年前になることを明らかにしています。
知らない間に茹で上がらないために
今年の夏は特に暑いなどと報道されてもそれが毎年のことになれば驚きではなくなります。
地球の温度が確実に上昇し各国が温暖化対策に向けて行動しようとしても、私たちにはそれがあまり深刻なことのようには思えなくなる可能性があります。
これはまさに私たち人類が地球という器の中で茹でられるカエルのような状態にいることを示しています。
今回の研究はTwitterという一部のツールを用いた研究でしかありませんが、一般の人々が異常気象を通常だと認識してしまえば、科学者や政府がその対策に向けて行動するのをより困難にしてしまいます。
Moore氏は人々が気づかないうちに過酷で異常な天候に慣れてきているといいます。
5年以上前に起こったことを忘れる傾向にあるならば、現在の歴史的に極端な状況を異常だとは感じないかもしれません。
私たちは知らないうちに干上がってしまうのでしょうか。
Moore氏はこの研究が他の気候変動の要因を考慮していないことを挙げ、暴風雨や干ばつ、山火事や洪水などを含めれば結果がかわる可能性があると付け加えています。
そういえば毎年“今年は異常気象だ”と気象予報士が言っているような気がします。
平均気温が10度も20度も上昇すればさすがに気づくとは思いますが、そのときにはもしかしたら手遅れなんてことにもなりかねません。
地球で茹であがるカエルにならないためにも、現代は人為的な要因で気温が上昇している時代である、ということを頭の隅に入れておくのがいいのかもしれません。
References:ScienceAlert,PNAS