虫が嫌う成分をアロエの皮から検出 天然の殺虫剤の開発につながる可能性

自然
(George E. Koronaios/Flickr)

一般的にアロエベラとして知られるアロエ属の植物は、古くから傷の治療や消化機能の改善などに用いられてきました。

近年では皮膚に塗るクリームやヨーグルトの材料などとしても使われるようになり、日常生活の中で目にする機会が増えています。

アロエの需要が高まる一方で、皮の部分はというと、価値がないものとみなされており、そのほとんどが農業廃棄物として捨てられています。

大量に廃棄されるアロエの皮を何かに利用できないだろうか――アメリカの研究者は、この問いに対する答えをふとしたことから見つけました。

アロエの皮は将来、天然由来の殺虫剤の原料として使われるようになるかもしれません。

 

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アロエの皮には殺虫効果のある成分が含まれている

 

米国テキサス大学リオグランデバレー校の生理学者、デバシシュ・バンジョパディヤイ氏を中心とした研究チームは、アロエベラの皮に含まれる化合物から殺虫性能の高い物質を特定しています。

実験が行われたきっかけは、バンジョパディヤイ氏と同僚が、地元にあるアロエの生産施設を訪れたことでした。

二人は施設を見て回るうち、他の植物には虫がたかるのに、アロエの葉には近づかないことに気づきました。

ここに天然の殺虫剤のヒントがあると直感したバンジョパディヤイ氏は、研究室に戻り、アロエの皮から成分を抽出する作業を始めました。

 

アロエ自体が虫よけになることは広く知られており、家庭菜園では自然農薬の一種として使われることがあります。

しかし皮はほとんどの場合、捨てられます。

現在、大規模なアロエ製品の工場では、皮は廃棄物として処理され、主に土壌を改善するためのバイオマスとして利用されています。

このアプローチは一見、環境にやさしいように見えますが、腐った廃棄物によりメタンなどの温室効果ガスが大量に発生し、気候変動を促進する一因になる可能性があります。

バンジョパディヤイ氏は、「おそらく、毎年世界中で数百万トンのアロエの皮が廃棄されている」と述べ、これらに価値を加えて役立たせることは、持続可能な生産において有意義であると指摘しています。

 

アロエの皮には殺虫成分のある化合物が含まれている (Francisco Floreal Artese/Flickr)

 

実験では、アロエの皮に含まれる化合物を抽出し分析するため、水、ヘキサン、メタノールなど、様々な溶媒が使われました。

最も強力な殺虫成分が抽出されたのは、ジクロロメタンでした。

研究チームは以前、ヘキサンの抽出物に蚊に対して効果のある化合物が含まれていることを確認していますが、ジクロロメタンの抽出物はそれよりも高い殺虫性能を示しました。

一連の実験の結果、研究チームはアロエベラの皮から20を超える化合物を発見しました。

これらの中には、既に知られているような健康上の利点に関するもののほかに、殺虫特性をもつ6つの化合物も含まれています。

また同定された化合物が有毒ではなく、天然の殺虫剤をつくるうえで、重大な危険がないことも確認されました。

 

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アフリカやインドなどの熱帯、亜熱帯地域では、昆虫による農産物の被害が増大しています。

農産物を守るため、現地では有害な化学物質を使った殺虫剤が撒かれ、環境を汚染しています。

アロエの皮を使った天然由来の殺虫剤は、このような地域の生産者を助けることができます。

現在研究チームは、新しい殺虫剤を実際の畑でテストしています。

また化合物が、蚊やダニに対して効果があるかも調査しています。

バンジョパディヤイ氏は、「有害で有毒な合成化学物質を使わない殺虫剤を開発できれば、農業分野を助けることができます。そしてアロエの皮に蚊やダニに対する効果があれば、一般の人々も助けることができます」と述べています。

 

研究チームの成果は、アメリカ化学会の2023年秋季大会で発表される予定です。

 

 

 


 

 

かなで
かなで

アロエにはいろんな効果が隠されてるんだね

しぐれ
しぐれ

皮が殺虫剤になれば生産者の新たな収入源にもなるね

 

Reference: Phys.org