アメリカとチリの研究者が行った植林に関する調査は、温暖化を防ぐ方法としての植樹が、場合によっては効果がないことを明らかにしています。
二酸化炭素を貯蔵できる森林は、地球の温度を一定に保つには欠かせない存在です。
しかし近年アマゾンをはじめとした巨大な炭素貯蔵庫が、開発や火災などにより失われています。
現在多くの国の政府が、森林を回復する活動に助成金を出しています。
しかしそのお金のほとんどは正しく使われていません。
植林に使われる助成金は温暖化防止に役立っていない
アメリカとチリの研究者は、チリが1986年から2011年にかけて行った植樹キャンペーンでのお金の使われ方を追跡しています。
このキャンペーンでチリ政府は、植林に関わる費用の75%を補助していました。
チリの広大な原生林はアマゾンにならぶ炭素貯蔵庫であるだけでなく、豊かな生物多様性を持つ、地球にとって重要な森林地帯です。
自国の森林を回復するために多くの資金を費やしたチリは、世界の植林政策のお手本になりました。
しかしその実態は、政府が望むものとは異なっていました。
調査では、キャンペーン期間中の森林面積が回復傾向にあったことが示された一方で、原生林が減り、代わりに商業的に利益を生み出す木が増えていたことがわかりました。
一部の地主は助成金を使って原生林を伐採した後、そこに果物やゴムなどの商業的価値のある木を植えていました。
見た目の森林面積は増えていても、より多くの炭素を吸収できる原生林の数は減っていました。
研究を行ったスタンフォード大学のエリック・ランビン教授は、「これらの結果は政策が目指していることの正反対である」と指摘し、「植林を奨励する政策が十分に設計されていないかまたは実施が不十分である場合、公的資金を浪費するだけでなく、より多くの炭素を放出し生物多様性も失ってしまう」と述べています。
研究では、IUCN(国際自然保護連合)が2011年にドイツのボンで立ち上げた「ボン・チャレンジ」についても分析が行われました。
ボン・チャレンジは、世界の荒廃した森林3億5000万ヘクタールを2030年までに再生することを目標にしており、現在約40ヵ国がこのアイデアに賛同し、植林を推進するための助成金を出しています。
分析結果からは、ボン・チャレンジで行われた植林の約80%に、単一の作物を栽培するプランテーションや、商業的価値のある木の植樹が含まれていることがわかりました。
これは補助金政策が、温暖化を防ぐ原生林の回復に役立っていないことを意味しています。
研究者は、現状のアプローチでは森林の多くがプランテーションに代わるだけだと指摘したうえで、原生林と生物多様性を守るための新しい森林再生政策が必要であると結論づけています。
ただ木を植えればいいってわけじゃないんだねー
地主の生活を守りながら原生林を維持するのは簡単じゃないかもしれないね
References: BBC,Nature Sustainability