フィンランドのSolar Foodsという企業は、空気と水、そして電気の3つを使って食料を生産しようとしています。
地球の人口は増加を続けているため、安定した食料供給は緊急の課題です。
また世界中で行われている畜産や農業は多くの資源を必要とし、地球温暖化に拍車をかけています。
フィンランドの国立研究機関の元科学者たちによって2017年に設立されたSolar Foodsは、将来の食糧問題と環境問題を解決するべく、新しい食べ物の生産に向けて日夜研究を続けています。
Solar FoodsのCEO、パシ・ヴァイニッカ氏(Pasi Vainikka)は、「地球を気候変動から守るためには、食料生産を農業から切り離す必要がある」と述べています。
地球の環境にやさしい“空気からの食べ物”、ソレイン
Solar Foodsでは現在、試験的な工場が稼働しており、そこでは「ソレイン(Solein)」と名付けられたプロテインパウダーが生産されています。
ソレインは現在市販されているタンパク質のサプリメントと同様に味がなく、ほとんど全ての食事に加えることが可能です。
この天然のタンパク質は、ビールの醸造で使われるような発酵タンク内で、液体中の微生物を成長させることによって作られています。
2019 © Solar Foods
微生物は成長の過程で、二酸化炭素と水素の泡、栄養素、ビタミンだけを食べます。
このうち水素は水に電気を通すことで生成され、また二酸化炭素は空気から抜き取ることで得ています。
このプロセスは従来の農業よりも、生産される温室効果ガスの量を削減することができます。
Solar Foodsはソレインを「薄い空気からの食べ物」と表現し、最終的な製品が、タンパク質と炭水化物、そして脂肪が約65%の粉末になると謳っています。
ヴァイニッカ氏は、ソレインの粉末がパンやパスタのような食品だけでなく、植物ベースの肉や乳製品の代替品にもなると話し、また通常の肉に比べて100倍気候にやさしく、生産時に使用される水がはるかに少なくなると強調しました。
試験工場では、1日に約1キロのソレインを生産することができます。
Solar Foodsは2021年までにソレインを市場に投入し、数百万の食事を提供することを目指しています。
ヴァイニッカ氏は、「100%のタンパク質を1キロあたり5ドルから6ドルで製造できる」と話しますが、現在稼働しているのは試験的な工場のみであるため、世界の市場に打って出るには大規模な商業生産ができる体制にスケールアップする必要があります。
またソレインを商品として売るためには、当局の承認を得る必要もあります。
Solar Foodsには関わっていない、スウェーデン農業科学大学のトマス・リンダー准教授は、ソレインのような微生物に由来するタンパク質は、二酸化炭素の排出量を減らし地球を救う役割を果たすことができると述べています。
ソレインは生産の際に二酸化炭素を使うため、地球のどこの地域でも作ることができ、それは農地のために酷使されている土地や森林の回復を助けます。
一方でリンダー氏は、大規模な工場が作られた場合、その施設には大量のコンクリートと鋼鉄が使われることを指摘し、それが余分な炭素排出につながるとして、ソレインについてはさらなる研究が必要になるのではないかとの見方を示しました。
Solar Foodsは現在ESA(欧州宇宙機関)と協力して、軌道上で宇宙飛行士がソレインを利用することができるよう作業を進めています。
ヴァイニッカ氏は「私たちは植物と同じことをしていますが……しかし太陽は必要ありません」と述べ、ソレインの作られるプロセスが根本的に効率的なものであることを強調しています。
環境にやさしい食べ物が作られるのはいいことだね
将来の人類の食事は粉末になってしまうのだろうか……
References: CNN