古くから探検家や研究者たちに知られてきた、南極にある緑色をした氷山(Green Icebergs)は、その色の由来について数々の仮説を生んできました。
これまでに決定的な答えは見つかっていません。
今年の1月に発表された新しい研究は、氷山の緑が酸化鉄によるものではないかという仮説を立てています。
これが事実だとすれば、この緑の氷山は海の生き物たちの命の源である可能性があります。
気泡がまったくない緑色をした氷山
30年以上に渡ってこの緑の氷山を研究してきた、米国ワシントン大学の氷山学者であるStephen Warren氏は、1980年代に採取された氷山のサンプルを分析し、この氷山が他のものとは明らかに異なる性質を持っていることを発見しました。
この氷山には気泡がほとんどありません。
気泡は氷山の色を決定づける要素で、通常氷河の色は白か鮮やかな青色をしています。
色の違いは氷河の年齢の違いであり、古い氷ほど青くなります。
氷に雪が積み重なると重みによって気泡が抜け、一定の波長の太陽光(青)しか通さなくなるため古い氷河は青く見えるようになります。
この緑の氷山には気泡がありませんでした。これが普通の氷河の氷でないことは明らかでした。
当初この色の原因は、氷に付着した有機物――植物や死んだ動物――が関係していると考えられていました。
しかし有機物の含有量についてほかの氷山と比較を行ったところ、大きな差がないことが明らかになりました。
Warren氏は色の違いの謎が有機物にはないことを知り落胆しますが、2016年にコペンハーゲン大学の海洋研究者たちが発表した研究結果によって、新たな結論に到達しました。
緑色の正体は南極大陸の鉄分――それは海の生き物にとって重要な栄養素
マリンアイス(Marine Ice)の部分が緑色の正体だと考えられる Credit: AGU
コペンハーゲン大学の海洋研究者が行った調査結果は、南極の東に位置するアメリー棚氷の底で採取された「マリンアイス(Marine Ice)」とよばれる氷の層のサンプルが、上部のサンプルに比べて500倍の鉄分を含んでいることを明らかにしました。
この鉄分は南極大陸にある岩石に由来しています。
これは氷河が大陸の上を流れ、海にせり出していく過程で岩を削り取り、その成分が氷河に含まれていったことを意味しています。
氷河に吸収された鉄分は海水に触れて酸化し、光を浴びることで緑色を放ちます。
Warren氏は、緑の氷山は大陸の岩石に含まれる鉄分によるものだと考えました。
そして鉄分を含む氷山は、プランクトンなどの海洋生物や海の植物にとって重要な栄養素になっているという仮説を立てます。
Warren氏は、氷山が世界の海に流れていく様子を郵便に例えます。
郵便局の荷物のようなものです。氷山はこの鉄を遠く離れた海に届け溶かすことで、その栄養分を植物プランクトンに与えることができます。
過去の調査結果では、南の海に含まれている鉄分は、海洋生物にとって豊富といえる量ではないことがわかっています。
Warren氏の仮説が正しければ、南極大陸は周囲の海洋生物のために、氷河を通じて鉄分を提供していることになります。
緑の氷山はただのエキゾチックな好奇心にしか過ぎないと思っていましたが、私たちは現在、それらが重要なものであるかもしれないと考えています。
Warren氏と研究チームは今後、仮説を確かめるための一連のテストを行う予定です。
Why are some icebergs green?
南極が海の生きものに鉄分を分けてあげてるんだね
氷山がまるまる緑色になっちゃうなんて面白いねー
References:JGR Oceans,LiveScience