自然環境にさらされたプラスチックは時間ととも微細化し、より小さなマイクロプラスチックへと姿を変えます。
プラスチックの分解は、衝撃や太陽の熱などのほかに、動物の体内に取り込まれることによっても起こります。
しかしどの生物がプラスチックの分解に深く関わっているのかはよくわかっていません。
アイルランドの研究者は、水生生物の体内に取り込まれたプラスチックがどのような変化を起こすのかを調べる実験を行っています。
一部の生き物はプラスチックをマイクロプラスチックに変えるだけでなく、より小さなナノプラスチックに分解することができます。
ヨコエビはプラスチックを1000分の1ミリにまで分解できる
アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・コークの生物学者である、アリシア・マテオス-カルデナス博士の研究チームは、淡水に生息している体長2cmほどのヨコエビ(Gammarus duebeni)にポリエチレン素材のプラスチックを与え、どのような反応を示すのかを観察しています。
プラスチックには蛍光素材が塗られており、体内に取り込まれた際の動きを顕微鏡で確認できるようになっています。
実験で観察された108匹のヨコエビのうち72匹は、取り込んだプラスチックをマイクロプラスチックに分解しました。
この数字自体は想定の範囲内でしたが、研究者が驚いたのは、ヨコエビが時間の経過とともにさらに小さなナノプラスチックを生み出したことです。
マイクロプラスチックは一般的に1ミリから5ミリほどのプラスチック片を指しますが、ナノプラスチックはこれらよりもさらに小さい1000分の1ミリ(1ミクロン)ほどの大きさしかありません。
ヨコエビはプラスチックにさらされている時間が長くなるにつれ、プラスチックをより細かく分解しました。
また環境に食事となる餌があった場合には、分解能力がさらに上昇しました。
これはプラスチックの分解に摂食行動が関わっていることを意味しています。
実験全体で最も多くのナノプラスチックを体内に保有していたのは、プラスチックに4日間さらされたヨコエビでした。
カルデナス博士は、「この発見は、環境におけるプラスチックの運命についての理解に新たな側面を加えるものだ」と話しています。
環境に捨てられたプラスチックは川から海にたどり着きます。
しかしそれらのプラスチックが、最終的にどんな形になりどこに到達するのかは解明されていません。
他の動物の重要な食糧であるヨコエビがナノプラスチックを宿しているという事実は、プラスチックが最終的に人間の元に戻ってくる可能性を示唆しています。
カルデナス博士は、ヨコエビや未知の種が蓄積したナノプラスチックは、鳥や魚などの捕食者に移動すると説明し、「動物によるプラスチックの分解は、汚染の問題をさらに複雑にし人々を心配させるだろう」と述べています。
研究結果はScientific Reportsに掲載されました。

捨てても結局戻ってきてしまうとは……因果なものだな

海の生き物にはものすごい量のプラスチックが蓄積されてるんだろうね
References: The Guardian