花粉を媒介する昆虫として誰もが思い浮かべるのがミツバチです。
蜂蜜を作り、受粉によって作物の生産を助けるミツバチは、人間の生活に欠かせない生き物として認識されています。
しかし花粉を媒介する昆虫はミツバチだけではありません。
イギリスの研究者は、衣服に穴を開けることで嫌われている「蛾」について広範な調査を行っています。
ほとんどが夜行性である蛾は、日中に活動するミツバチと比べ、その役割について大きな誤解を受けています。
蛾もまた立派な花粉媒介者であり、人々の生活と生物多様性の維持に貢献しています。
蛾はミツバチよりも多くの種類の花粉を媒介している
英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのリチャード・ウォルトン博士たちの研究チームは、2016年と2017年の3月から10月にかけて、ノーフォークの農場地帯にある9つの池の周囲で、蛾の行動を調査しました。
その結果、全体の45%の蛾が何らかの花粉を媒介していることが明らかになりました。
蛾はミツバチや蝶などの他の花粉媒介者が止まらない花にも訪れ、クローバー、キイチゴ、マメ科の植物など、その数は合計で47の種に及びました。
花粉を媒介する昆虫の代表であるミツバチとマルハナバチが、一貫して蜜の多い花に止まる一方で、蛾は選り好みをせず、様々な種類の植物を訪れました。
調査対象の一種であるスズメガ科の蛾 (Paul VanDerWerf/Flickr)
観察では、蛾の羽に付着した花粉が媒介に大きな役割を果たしていることが確認されています。
過去の研究は、主に昆虫の口や鼻に付着した花粉に焦点をあてていました。
ウォルトン博士は、「蛾はジェネラリストになる傾向がある」と説明し、ミツバチとは違いあらゆる種類の花にアクセスできる蛾は、受粉プロセスの重要な一部分になっていると述べています。
蛾は夜行性なため、日中に活動するミツバチのように、花粉の媒介者としてはほとんど認識されていません。
研究者は、蛾は他の受粉者を補完し、植物と生物の多様性の維持にも貢献できる存在だと強調しています。
1970年代以降、蛾の数は減少傾向にあります。
蛾の減少は、カッコウやコウモリなどの蛾を餌とする生き物にも影響を与えています。
蛾を救うには、農薬の使用を減らし植物の多様性を促進する必要がありますが、蛾は現状、人々に正しく理解されていません。
ウォルトン博士は、「目に見えないからといって蛾の重要性が損なわれるわけではない」と指摘したうえで、蛾が生態系に果たしている役割について、人々にもっと知ってもらうことが必要であると話しています。
研究結果はBiology Lettersに掲載されました。
蛾は見た目で誤解されている部分がある……
蛾もミツバチと同じくらい人間の役にたってるんだねー
References: BBC