天然素材100%でも脅威 飛んでいったゴム風船が自然環境に与える影響

自然
(Kushagra Saxena/Unsplash)

最近のプラスチック製品には、「自然に還る」ことを謳ったものが多くあります。

時間の経過とともに分解されるプラスチックは、環境に配慮した製品を求める消費者に人気です。

しかしこうした製品の全てが、企業の主張するようなエコな製品であるとは限りません。

 

オーストラリアの研究者は、環境にやさしく安全であるとする「天然ゴムの風船」についていくつかの実験を行っています。

自然に還るとされた風船は、4カ月たっても元の形のままでした。

 

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風船は天然ゴムで出来ていても自然にやさしくない

 

タスマニア大学のモーガン・ギルモア氏の研究チームは、市販されている天然ゴムで作られた風船が、実際の自然環境でどう変化するのかを確かめる実験を行っています。

この風船は「100%天然のラテックス素材」を謳っており、適切に処理されなかったとしても自然分解し、環境への被害はないとされている製品です。

 

風船には2つの問題があります。

1つはそれが環境に影響を与える廃棄物であるという点です。

風船に使われるゴムは天然のものと石油由来のものがあります。

天然のゴムは自然に分解されるため環境への影響が少ないとされていますが、動物が誤って摂取した場合、その命を脅かします。

また石油由来のゴムは自然環境で劣化しマイクロプラスチックに変わります。

 

もう1つの問題は、製品が100%天然素材にはなりえないという点です。

ゴムの素材であるラテックスを風船に加工するには、多くの化学物質を追加する必要があります。

風船には、酸化防止剤、可塑剤、防腐剤、難燃剤、香料、染料、顔料などが含まれており、またこれらを密着させるためにさらに多くの化学物質が使用されています。

 

風船が自然にやさしい製品でないことは明白であり、オーストラリアの一部の州では使用に制限が設けられるなどの対策がとられるようになっています。

しかし世界のほとんどの国や地域は、風船を環境に対する深刻な脅威とはみなしていません。

 

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風船が自然に還るには時間がかかりすぎる

 

実験では風船を自然に似せた環境に放置し、分解がどの程度、またどれくらいの時間で行われるのかを検証しました。

複数の青と白の風船はまず、イベントやパーティーなどでの使用を想定し6時間日光にさらされてから、工業用コンポスト(生ごみを堆肥化する装置)と、海水と淡水のタンクの中にそれぞれ入れられました。

コンポストとタンクには自然環境に近づけるために空気が送り込まれました。

風船は2週間ごとに40個ずつが無作為に取り出され、劣化を記録するための写真が撮られました。

そして16週間後、全ての風船について劣化具合や強度の測定が行われました。

 

コンポストに16週間入れられていたゴム風船 (Jesse Benjamin)

 

まず劣化に関しては、表面のスペクトル分析の結果、どの容器のなかであっても化学組成がほとんど変化していないことがわかりました。

水の中の風船は紫外線によって多少の劣化が認められましたが、コンポストの中の風船はほぼ無傷でした。

 

強度については、引っ張りにどれだけ耐えられるかを測定しました。

水の中の風船は強度の約75%が失われました。

一方でコンポストの中の風船は、埋められる前とほぼ同じ強度を保ち続けていました。

これらの結果は、風船が陸、川、海を問わず、長期間劣化しないことを表しています。

 

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ギルモア氏によると、風船の劣化に関する研究は企業が主導した1989年のものがあるだけで、自然に分解されるという根拠も全てここから来ています。

この研究は、6週間後の風船について「樫の木の葉っぱと同じくらい劣化する」とし、野生生物への影響はほとんどないと結論づけました。

しかし30年後に行われた今回の実験は、程度の差こそあれ、風船が長期間にわたって劣化せず、自然環境に多大な影響を与える可能性があることを明らかにしています。

16週という期間は、風船の全てが自然に還るには短すぎます。

 

ギルモア氏は野生生物に脅威を与えない風船の利用方法として、「屋外で風船を飛ばさない」、「ヘリウムガスの入った風船を使用しない」、「使用後はゴミ箱に捨てる」、「風船の代わりとなるようなもの(例えば泡)を使用する」などを挙げています。

 

研究結果はJournal of Hazardous Materialsに掲載されました。

 


 

 

しぐれ
しぐれ

ほとんどの人は風船がどこに到達するのかなんて考えたこともないんじゃないかな

ふうか
ふうか

エコを前面に押し出した製品は一度疑ってみるのも手だ

 

References:The Conversation

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