ユニコーンのモデルとなった動物はつい最近まで人間と一緒に生活していた

自然

ユニコーンと聞くと何を連想しますか?

角の生えた馬?ファンタジー映画やゲーム?それともロックバンド?

なぜか純情な乙女が好きでたまらないという伝説上の動物ユニコーンですが、この想像上の生き物にはルーツとされる動物がいくつか存在しています。

有名なところではイッカクやオリックス、山羊や牛などもモデルとされています。

……角があればなんでもモデルになった、と言えばそれまでなのですが、もう一つ有名になったモデルがいます。

 

最近の発掘調査で、その“モデル”がかなり最近まで人間と一緒に暮らしていたことがわかってきました。

「シベリアのユニコーン」と呼ばれるその動物について少し見ていきましょう。

 

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この巨大なサイは少なくとも39000年前まで生息していた

 

Elasmotherium sibiricum, autor – Bogdanov,2006,DiBgd

 

シベリアのユニコーンとして知られるこの動物は、全長およそ5メートル、全高2.2メートルの大型草食獣で、鼻に大きく長い角を持ちユーラシア大陸の草原を歩き回っていました。

大きな角は雪を掻きだしたり土を掘ったり、またライバルを追い払ったりするのに使われ、頑丈な足は馬のようなスピードを出したといいます。

最近の研究ではこの動物は、食の変化に耐えらなかったことで絶滅したとされています。

 

ロンドン自然史博物館のエイドリアン・リスター教授は、このサイが食について非常に選り好みが激しいこと、そして環境の変化が彼らを絶滅の危機に立たせたと語りました。

 

サイは現在4属5種類しか地球上に存在していません。彼らの多くは人間の狩りの対象にされたり、縄張りの中でしか生活しないことで環境の変化に適応できずほとんどが絶滅してしまいました。

 

特別な角を頭に持つこの「シベリアのユニコーン」は体重が約4トンもあります。

年代調査によると少なくとも39000年前までは地上で人間と共に暮らしていました。

 

エラスモテリウム――古代サイ族の最後の種

 

Image Credit:Reconstruction of Elasmotherium sibiricum from Middle-Late Pleistocene of Asia and Europe,ДиБгд

 

エラスモテリウムはこれまで10~20万年前に絶滅したと考えられていました。

しかし今回研究者たちが放射性炭素年代測定を使い試料を調べたところ、少なくとも39000年前までは、東ヨーロッパ、および中央アジアで生息していただろうことがわかりました。

またエラスモテリウムのDNAを初めて単離させてみたところ、このサイ群が約4000万年前に現在のサイたちとは枝分かれしていることを発見しました。

エラスモテリウムの絶滅は1つのグループの終焉を示していることになります。

 

氷期について――
地球の歴史を見るとほぼ決まった間隔で氷期(温度の低い時期)と間氷期(比較的温暖な時期)が繰り返されてきました。その間隔は4万年から10万年とされていて一番最近の氷期は約1万5千年前に終わったとされています。

 

エラスモテリウムのDNAの調査でこのサイ群が4000万年も前から続いていることがわかりましたが、その長い間に氷期と関氷期も繰り返されてきたはずです。

それなのになぜ39000年前の氷期で絶滅してしまったのでしょう。

 

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ユニコーンの最大の敵――それは人間

 

 

リスター教授の研究では、この古代のサイは、自らの鋭利で固い歯をまるで芝刈り機のように使って草を食べていたことがわかりました。

そして約7万年前から1万年前までの最終氷期の間に起きた気候変動により、サイの主食である草原が失われ、それが原因で絶滅したのではないかと語っています。

この気候変動はサイだけでなく多くの動物種にとっても致命的で何百もの大型哺乳類が姿を消しています。

 

現在のサイの習性から推測するに、このエラスモテリウムもなわばり意識が強くあまり移動しない性質だと考えられています。

長い間同じ場所にいることと餌となる草の減少、そこに気候変動が加わることで種の絶滅につながっていったのです。

 

そしてサイにとってもっとも恐ろしい敵が人間でしょう。

ユニコーンの伝説は古くは紀元前4世紀頃から文献に認められていますが、その頃からユニコーンの持つ“角”の効用がまことしやかに伝えられてきました。

伝説ではユニコーンの角は毒に対して効果があるとされ、その角を求めて各地で狩りがなされたといいます。

またユニコーンは非常に頭がよくこちらがワナを仕掛けないとなかなか捕まえることができないとされます。

これはモデルとなったサイの大きさや固い皮膚、そして大きな角の存在が人々に畏怖の念を起こさせたことからきていると考えられます。

いずれにしても角は高い金額で取引されるようになり、サイは絶滅への道をたどり始めるのです。

 

現在でもサイは密猟者にとって標的です。一部では麻薬や金などよりも高値で取引され、5種しかいない地上のサイたちを守ろうと国際的な取り組みがなされています。しかし生息地域での治安の問題なども含めてすべてが順調というわけではないようです。

 

調査チームは各地で発掘される古代のサイの骨から、その食性や当時の気候変動、そして同じ時代に生きていた人間たちについて学ぼうとしています。

そうした過去を知ることが現在のサイたちにとって有益であることを願ってやみません。

 


 

医療技術も発展している現在、迷信のような効果を期待しサイの角を乱獲するようなことはあってはならないと思います。

ユニコーンのモデルとなった動物の子孫でもあるサイたちを守るのは、今生きているわたしたちに課せられた使命なのかもしれません。

 


 

 

かなで
かなで

えいっ!サイの角攻撃っ!

しぐれ
しぐれ

痛っ……くない?――ってこれ角じゃなくてと〇がりコーン?!

せつな
せつな

ふむ……これはなかなか塩味が効いておいしい♪

 

References:‘Siberian unicorn’ walked Earth with humans,Wikipedia