地球が暖まり続けているなか、科学者たちは、人類が考えていたほど気温の変化に強くないことを再確認しています。
各国政府は現在、2050年までの気温の上昇幅を抑えるために、温室効果ガスの排出レベルを削減しようとしていますが、その道のりは決してやさしいものではありません。
今後、気温の上昇により人の住めない地域がますます増えていきます。
新しい研究は、人類が今後50年で、過去6,000年で経験したよりも多くの困難に直面すると警告しています。
人類の暮らす3分の1の地域がサハラ砂漠と同じ気候に
アメリカ、ヨーロッパ、中国などの国際的な科学者グループは、熱帯雨林とサバンナの気候分布の研究を応用し、将来の気候変動による気温の上昇が、地球規模に及ぼす影響について分析を行っています。
研究者は気候変動によって人間の持つニッチ、すなわち生存に適した環境がどう変化するのかを、いくつかの気温上昇のシナリオを使ってシミュレーションしました。
人類の大多数は、年間平均気温が6℃~28℃の地域で暮らしています。
今後地球の気温が上昇すると、この範囲からはじき出されるグループが出てきます。
分析の結果最悪のシナリオの場合、世界の人口の3分の1が、平均気温29℃のなかで暮らさなければならなくなることがわかりました。
これは現在のサハラ砂漠の平均気温です。
また最も楽観的なシナリオでも、12億人が現在の生活圏から外れることになります。
気温の上昇は、現在アフリカやアジアの暑い地域に住んでいる人の生活を奪い、食料や住居、さらには移民の問題にもつながっていきます。
米国科学アカデミー紀要に掲載された研究の著者の一人で、オランダのヴァーヘニンゲン大学の生態学者であるマーテン・シェファー教授は、「29℃を超える平均気温では生きていけないといっても過言ではない」と述べ、十分なお金とエネルギーがあれば何とかなるかもしれないが、ほとんどの人はそうではないと指摘しています。
分析結果は、人間が他の動物と同じように、環境の変化に弱い生き物であることを露呈しました。
シェファー教授は、「人間は衣服や冷暖房を使用しているため順応性があるように見えるが、実際には大多数の人が気候ニッチの中で生活してきた」と説明したうえで、「今後50年で見られるニッチの変化は、過去6,000年よりも大きなものになるだろう」と付け加えています。
研究者は、ニッチからはじき出される人を救うために、温室効果ガスの排出削減を加速する必要があると結論づけています。
寒い地域の人はまだいいけど、暑い地域の人は引っ越さなきゃいけなくなるね
気候変動を止めるか、強力なエアコンを開発するか……どっちも高いハードル……
References: The Guardian