海鳥の混獲を防ぐ「目」の形をしたブイ 刺し網に近づく鳥の数を30%減少

自然
(Credit: Andres Kalamees)

鳥類保護を目的に活動しているバードライフ・インターナショナルは、漁業による海鳥の混獲を防ぐための新たな装置を開発し、実験結果を科学誌に公開しました。

混獲は、海に潜る鳥が漁網に引っかかることで起き、特に刺し網漁における被害は、海鳥の偶発的な死の主要な原因の一つとなっています。

近年の刺し網漁はその多くで、安価かつ水中での視認性が低いモノフィラメント構造の網が使われています。

しかしこの視認性の低さは、海鳥が網の存在に気づかずに絡めとられてしまう危険につながります。

混獲による海鳥の犠牲は毎年150種40万羽にも上りますが、これまでに決定的な対策は見つかっていません。

 

スポンサーリンク

 

海上で鳥を睨みつける人工の目

 

バードライフ・インターナショナルとエストニア鳥類学協会の研究者たちは、混獲の被害が絶えないバルト海で実験を行ない、海鳥が「目」を避ける傾向にあることを発見しました。

バルト海は刺し網漁業における混獲被害の世界的ホットスポットで、年間76,000羽の海鳥が犠牲になっていると推定されています。

従来の混獲対策には、網にLEDライトや、白と黒のコントラストを強調したパネルを取り付けるなどの方法がありますが、どれも効果が限定的であることがわかっています。

今回研究者は、海鳥を網そのものから遠ざけるため、水中ではなく水面に焦点を当て装置を開発しました。

 

新しく作られたのは、「Looming eyes buoy (LEB)」と呼ばれる生き物の目を模したパネルで、刺し網の位置を示すブイに取り付けられます。

LEBは、白と黒の円形模様を立体的に組み合わせた構造になっており、風によって回転することで目が迫ってくるような錯覚を鳥に与えます。

鳥を含む多くの動物は、目に対して警戒心を抱きます。

一部の蝶は敵の攻撃を回避するために、羽の模様を動物の目に変え、都会に生息するカモメは、人間の視線からなるべく遠ざかろうとします

 

LEBのイメージ図。ブイに取り付けると回転し鳥は警戒心を抱く (Royal Society Open Science)

 

実験は、海鳥が頻繁に訪れるエストニアのサーレマー島沖で行われました。

まず実際の刺し網漁をシミュレートするために、25,000平方メートルの海域を、LEBを含むいくつかのブイで六角形に取り囲みました。

その後対照群として、500メートルほど離れた場所に、通常のブイのみを使った区画も作りました。

研究者はブイで囲まれた二つの区画を62日間、計250時間にわたって観察し、海鳥の反応を記録していきました。

 

実験で観察されたコオリガモ (Gregory”Slobirdr”Smith/Flickr)

 

観察の結果、LEBには、鳥の集まりを減少させる効果があることがわかりました。

この海域の海鳥の9割以上は絶滅の危険性があるコオリガモで、期間中2941回確認されました。

どちらの区画にも満遍なくコオリガモがいましたが、LEBの半径50メートル以内には少数の鳥しか近づきませんでした。

LEBは通常のブイと比べ、周囲に飛来する鳥の数を20%から30%減少させました。

またLEBの撤去後の観察では、鳥たちが時間の経過とともにその場所に戻ってくることも明らかになりました。

これは、LEBが鳥の餌場に恒久的な影響を与えないことを示しています。

 

コオリガモを含む多くの海鳥は、一回の潜水で50メートル以上の距離を移動しません。

刺し網の近くに設置したLEBは、混獲を防ぐ効果的な手段となる可能性があります。

研究を行ったバードライフ・インターナショナルのヤン・ルーセル氏は、「これまでの混獲対策は、様々な漁業や魚の種類に対応できるものではありませんでした。しかし鳥を刺し網に近づけず海に潜らせないようにすれば、混獲のリスクは減らすことができます」と述べています。

 

スポンサーリンク

 

目に対する鳥の警戒心は時間とともに薄れていくため、LEBだけが混獲を防ぐ切り札になるわけではありません。

分析では、一部の鳥が25日以内に、LEBに対する「慣れ」を獲得したことが示されています。

今回の実験で使われたLEBは試作品で、改良の余地が多く残されています。

LEBを普及させるには、鳥の保護に対する漁業者の関心を高めるだけでなく、使用やコストの面でも負担にならないものにする必要があります。

英国エクセター大学の生態学者であるマデリーン・グーマス氏は、「様々な動物が、目を合わせることや目のような斑点を恐れます。しかし問題点は鳥が装置に慣れてしまうことです」と述べ、LEBをより効果的なものにするには、「他の戦略も並行して検討する必要がある」と指摘しています。

 

研究結果はRoyal Society Open Scienceに掲載されました。

 


 

 

かなで
かなで

海のかかしみたいなものだね

しぐれ
しぐれ

あとは漁師の人たちが使ってくれるかどうかだね

 

References: The Guardian,BirdLife International