人の食事を虎視眈々と狙うカモメを撃退する新たな方法が発見されています。
ただじっと見つめる――それだけでカモメの行動を遅らせることができます。
イギリスの研究者たちが行った実験は、屋外でのランチタイムを荒らすカモメを撃退するだけでなく、野生生物と人間が共存していくための“やさしい”方法を提案しています。
じっと見つめるだけ――カモメは人間の視線を嫌う
英国エクセター大学のマデリン・グーマス氏が率いる研究チームは、カモメの窃盗行動が人間の行動に影響されるかどうかについて調べています。
研究の対象となった「セグロカモメ」は主に海岸や河口などに住んでいる種ですが、近年は都市部で繁殖する例があり、人間社会との接触の機会が増えています。
セグロカモメは人間の食べ物を狙うだけでなく、いわゆる「スカベンジャー」としてゴミを荒らし、また人を含む脊椎動物の消化管などに寄生するクリプトスポリジウムの媒介者でもあります。
セグロカモメは人間との対立がきっかけで、イギリスにおいては1969年から2015年までの間にその個体数が約60%減少し、国内のレッドリストに登録されました。
しかし一方で都市部では繁殖しており、研究者たちはセグロカモメの個体数を維持しつつ、人間との共生を可能にするような方法がないかを模索し続けています。
実験はこうした背景を元に行われました。
Photo by Peter O’Connor aka anemoneprojectors | Flickr
実験は透明なフリーザーバッグにフライドポテトを入れ、それをカモメの群れの目につくところに置くことから始めました。
研究者はストップウォッチを使いカモメが餌に近づくまでの時間を測定します。
さらに餌に近づくカモメを人間がじっと見る場合とそうでない場合との時間差も記録していきました。
実験の対象となったカモメは74羽で、そのうちの19羽が餌を置いてから300秒以内に行動を始め、最終的に餌の場所までたどりつきました。(残りのカモメは警戒して近づかなかったり、設定した時間をオーバーしたりしたためデータには加えられませんでした)
19羽のカモメのうち人間にじっと見られていた個体は、そうでない個体と比べ餌に到達するまでの時間が長く、平均で21秒行動が遅くなりました。
人に見られることで行動を遅らせたカモメの行動に対し研究者たちは、その背景に「学習」の要素があると推測しています。
これはカモメが都市環境で採餌行動をする際に、人間の行動を観察しその視線を嫌悪することを示しています。人間によって追いやられた個体は、視線とそれがもつ潜在的な危険性について学習しているかもしれません。
研究者たちは、人の視線がなぜカモメに有効であるのかはまだわからないとしながらも、人間側のちょっとした行動が彼らとの接触を避けることにつながり、それはカモメの個体数の維持にも有効であるとしています。
人間の食べ物はカモメの生態系に影響を及ぼす可能性がある
セグロカモメは元々人間の食べ物――特に油で加工された食品――を食してはきませんでした。
しかし都市部で繁殖しているセグロカモメたちは、ゴミをあさったり、人間のランチタイムやバーベキューでのひと時を襲撃することを覚えてしまいました。
カモメにとっての自然な食事――魚や他の鳥の卵、カニやウニなどといった無脊椎動物――が、人間の食べている加工食品に変化したことで、今後彼らの生態に何らかの影響が出てくる可能性があります。
研究者たちは今回の結果を踏まえ、人間とセグロカモメが共生できる道を探りつつ、彼らの食事傾向の変化が将来の生態系に及ぼす影響についてさらなる調査を続ける予定です。
ランチを狙われないように周囲を警戒しよう!
もしカモメを見つけたらじっと見つめて目力で勝負!
References:BiologyLetters,ScienceAlert