南アメリカに生息している「マタマタ」と呼ばれるカメは、周囲の石や植物に擬態することが得意で、一生のほとんどを水の中で過ごします。
そのユニークな見た目と水底で獲物を待つ独特の狩りの方法からとても人気があり、水族館のほかに、ペットショップなどでも見ることができます。
これまでマタマタは、広い地域に分布していながらも、全て単一の種であると考えられてきました。
また個体数も十分であることから、現時点では絶滅の危険が少なくこれといった保全が行われていない動物でもあります。
国際的な研究者グループは、南アメリカ大陸の北側に位置するオリノコ川流域と、その南に広がるアマゾン川流域に生息するマタマタのDNAを分析した結果、これらが単一ではなく別々の種であることを発見しています。
マタマタが二つの種に分かれた場合、個体や生態に関するこれまでの評価が一変する可能性があります。
アマゾン川とオリノコ川のマタマタは別の種
従来のマタマタの種「Chelus fimbriata」 (Tim Evanson/Flickr)
コロンビア、ブラジル、イギリス、ドイツの研究者で構成された国際的なチームは、単一とされてきたマタマタの種が実際は二種であり、それらは約1,270万年前に遺伝的に分岐したものであると報告しています。
マタマタは、生息地域によって甲羅の形や皮膚の色が違うため、一部の研究者は亜種の存在を主張してきましたが、これまでに決定的な証拠はなく結論は棚上げ状態でした。
今回行われたDNA分析は、マタマタのカモフラージュ能力が、種そのものにも及んでいたことを明らかにしています。
研究者は南アメリカ大陸の広い範囲で合計75のマタマタのDNAサンプルを採取し、それらをカメの形態学的特徴ごとに分類していきました。
その結果、マタマタには大きく分けて二つの種が存在していることがわかりました。
一つ目の種は、アマゾン川流域とギアナのマフリー川に生息するもので、これまで単一のマタマタ(Chelus fimbriata)として認識されてきた種です。
二つ目は、オリノコ川とネグロ川流域に生息する新しく発見された種で、「Chelus orinocensis」と名付けられました。
それぞれのマタマタには外見的な違いがあり、アマゾン川に生息しているマタマタの甲羅は、より長方形で腹側の色が暗い一方、新種のマタマタは、甲羅が楕円形で腹側の模様がほとんどありません。
研究チームはDNAの分析から、二つの種は約1,270万年前の中新世後期に枝分かれし、アマゾン川とオリノコ川に散らばっていったと推測しています。
マタマタが単一の種ではなかったという事実は、このカメの多様性を明らかにするだけでなく、今後の保全にも影響を与えます。
「Molecular Phylogenetics and Evolution」に掲載された研究の著者の一人で、コロンビア国立大学の生物学者であるマリオ・バルガス-ラミレス(Mario Vargas-Ramírez)博士は、「これまでマタマタはその広範な分布から、絶滅の危機に瀕しているとは考えられてこなかった」と述べたうえで、今回もう一つの種が発見されたことは、実際の個体数が想定よりも少ない可能性を示唆するものだと説明しました。
そして、毎年違法に捕獲されたマタマタが当局に没収されている現状に触れ、手遅れになる前に、この魅力的な動物を保護しなければならないと強調しました。
研究者は、マタマタはペット需要のためにコロンビアとベネズエラで違法に捕獲されていると指摘し、種に与える影響について理解するためには、より多くの情報を収集する必要があると結論づけています。
マタマタは人気があるカメだけど飼うのは簡単じゃないみたいだよ
新しいマタマタは全体的に赤っぽいんだね
違法な取引を減らすためにもさらなる調査が必要になるな
References: ScienceAlert