世界最大の大きさで知られる「ゴライアスガエル」は自分の体重の半分ほどもある石を動かすことができます。
何のためにそんなことをするのでしょうか?……それは家族を守るためです。
新しい研究によると、ゴライアスガエルは大きな石を移動させ子供(オタマジャクシ)たちのための“保育所”を建設しています。
外敵から隔離された環境をつくることで次世代へと命をつなぐこの偉業は、カエルのお父さんとお母さんが、人間や他の動物と同じように体を張って子供を守っていることの証です。
世界最大のカエル、ゴライアスガエルの子孫繁栄戦略
世界最大のカエル、ゴライアスガエル Image:Marvin Schäfer
ゴライアスガエルは体長が30cm以上のものも少なくなく、体重は大きいもので3kgを優に超える世界最大のカエルの1種です。
Journal of Natural History誌に掲載された新しい研究は、ゴライアスガエルが自分の体重の半分以上もある2kgの石を動かし巣を作っていることを明らかにしています。
彼らは石を動かすことで隔離された巣をつくり、敵の攻撃から子供たちを守ろうとしています。
2018年の春に行われたカメルーンでの一連の調査に参加した科学者たちは、22の繁殖地を発見し、そのうちの14地点で3000個以上のゴライアスガエルの卵を見つけています。
ゴライアスガエルは現在急速にその数を減らしており、ここ10年間で50%以上の個体が失われたと推定されています。
その大きさによる名声にもかかわらず、生態や生殖活動についてはいまだによくわかっていません。
実は地元のカエルハンターは、ゴライアスガエルが子供たちのための保育所をつくることを知っていました。
科学者たちはその(にわかには信じられない)事実を確認するため、赤外線カメラを使い繁殖地を観察することにしました。
カメラは夜明け前に巣を作るゴライアスガエルの姿を捉えていました。
主任研究者の一人でベルリン自然史博物館の両生類学者マーヴィン・シェーファー氏は、今回の発見はゴライアスガエルが子供思いの親であることを示したものだと語ります。
急速に流れる川の端に作られた小さな巣は、卵とオタマジャクシを捕食者から守る避難所となっています。大きな石を動かす彼らの重労働は、彼らが巨大に進化した理由を説明するものであると考えられます。
ゴライアスガエルの3つの巣のパターンは子供たちを守るためのもの
観察された巣には3つのパターンがありました。
1つめのタイプは単純なもので、自然に発生する葉くずや砂利などを取り除いただけのものです。
調査では、水たまりから障害物を取り除くだけで巣の中の水の流れが緩やかになることがわかりました。
2つめのタイプは、川の近くに自然に発生する浅い池を利用したものです。
1つめのタイプと異なるのは、落ち葉や砂利などを移動させ元々のエリアを拡大している点です。
そして最後の3つめのタイプは、地元のハンターたちが科学者に報告した珍しい事例である、体重の半分もの大きさの石を動かして作られた“子供たちのための保育所”でした。
この保育所は流れの速い川の端に作られた隔離された区域で、大雨によって卵が流されたり捕食者が入り込んだりする可能性が最も少ない信頼性の高い巣です。
ゴライアスガエルはその長い脚を使って大きな石をせっせと運び、外敵の入ってこれない聖域を作り上げました。
ゴライアスガエルの作った子供たちのための“保育所” Image:Marvin Schäfer
シェーファー氏は、この3つめの巣が他の2つのタイプの巣とは違い、全てが1から作られていることに注目します。
まるで大雨の後にできた水たまりのようにも見えるこの巣は、確かに外敵から卵やオタマジャクシを守るのに適しています。
しかしこの形状は、雨が降らない日が続けば水が干上がり、中の子供たちが死んでしまう可能性を含んでいます。
一方で別の2つのタイプの巣は川に隣接しており、捕食者に狙われる危険性はあるものの天候によって干上がるおそれはありません。
今回の研究に出資したNGO「Frogs&Friends」の代表マーク・オリバー・レーデル氏は、異なる3つの巣の存在が、ゴライアスガエルの種の存続の可能性を高めているのではないかと考えています。
3つのタイプの巣にはそれぞれ長所と短所があり、ゴライアスガエルは特定の時期に最適な巣を選ぶ必要があるでしょう。
レーデル氏は、ゴライアスガエルのような有名な種でさえまだまだ知られていないことがたくさんあると指摘し、今回の研究が、絶滅の危機に瀕している生物たちへの理解につながることを望んでいます。
ゴライアスガエルは地元では豪華な食べ物として考えられていて、特に結婚式ではごちそうとしてテーブルに並ぶことがあるそうです。
ゴライアスガエルは食料として捕獲される以外にも、生息地の消失や分断化、環境汚染、病気などの理由によりその数を減らし続けています。
今回の研究が多くの人に知られることで、ゴライアスガエルの希少性が理解され保護活動につながるようになってほしいものです。
References:Journal of Natural History,Taylor and Francis Group