インド洋のココス諸島(キーリング諸島)には数えきれないほどのプラスチックが流れ着きます。
今年5月の調査では、4億1,400万個ものプラスチック片が漂着していたことが明らかになっています。
プラスチックは海だけでなく、浜辺で生きる小さな動物の生態にも大きな影響を与えています。
タスマニア大学の研究チームは、ココス諸島に生息するヤドカリが、流れ着いたプラスチックによって危機に陥っていると報告しています。
プラスチックはヤドカリの“殻”となり、彼らの生存を脅かします。
プラスチックを殻と間違えてしまうヤドカリ
タスマニア大学の海洋南極学研究所のジェニファー・レイバーズ博士たちのグループと、ロンドン自然史博物館の研究者とで構成されたチームは、インド洋に浮かぶココス諸島とニュージーランドの東にあるヘンダーソン島の調査を行い、そこが想像以上のプラスチックで汚染されていることを発見しています。
レイバーズ博士たちが最も心を痛めたのは、浜辺に生息するヤドカリの多くがプラスチックによって命を落としていたことです。
ココス諸島では508,000匹、ヘンダーソン島では61,000匹のヤドカリの死亡が確認されています。
ヤドカリの死の主な原因は、“彼らの習性と島に流れ着いたプラスチック”という、本来ならば出会うはずのない最悪の組み合わせによるものです。
ヤドカリは独自の殻を持たないため、成長に合わせて周囲にある貝殻に移り住みます。
貝殻はヤドカリの身を守る役割があります。
しかしもしその殻が、大きくて一度入ったら出られないものだとしたら、それは身を守るどころの話ではありません。
島のヤドカリはプラスチックを殻と間違えることで命を落としています。
レイバーズ博士は「死んだものと生きているもの、それら両方のヤドカリが入ったプラスチック容器の数に驚いた」と語っています。
ヤドカリは仲間の死を感知する能力があり、周囲のヤドカリが残した殻を自分のものとする習性があります。
プラスチックボトルを殻と勘違いしたヤドカリが死亡した場合、そこから仲間を呼ぶことで“死の連鎖”が始まります。
研究チームは、島のプラスチックがヤドカリを殺すトラップとして機能している、と報告しています。
ヤドカリは海洋の生態系にとって重要な生き物
Image by Nick Collins from Pixabay
島に流れ着くプラスチックの数は非常に多く、それはヤドカリたちの生存を脅かしています。
研究チームは島の調査結果から、1平方メートルあたり約1~2匹のヤドカリがプラスチック容器に閉じ込められているとしています。
中には、1つの容器に526匹ものヤドカリが入っていた例もありました。
レイバーズ博士は、ヤドカリは海洋生態系にとって重要な生き物であると述べます。
ヤドカリは土壌の通気と肥沃化、さらに種子の散布と残骸の除去によって熱帯環境の健康に重要な役割を果たしています。
博士は、ヤドカリの生息数の減少は自然環境に対する単なるリスク以上のものだと付け加えました。
研究チームは今回の結果から、世界の他の場所のヤドカリの生息数についても緊急の調査が必要だと訴えています。
タスマニア大学の調査では、島に流れ着いたプラスチックの多くは、ペットボトルのキャップ、ストロー、靴やサンダルなどの使い捨ての消費財でした。
プラスチックは便利で安価であるため、世界中で利用されています。
人間の生活になくてはならないプラスチックは、その処理を誤ると、環境や生きものたちに多大な影響を与えてしまいます。
プラスチックの利用に責任を持つことは、地球とそこで生きるものたちを守ることにつながっています。

確かに浜辺にいくとたくさんのプラスチックごみが散乱している……これは何とかしないと……

新しい殻が死の家になるなんて酷いよ~

ヤドカリを守るためにもプラスチックごみを減らしていかなきゃ!
References:CNN,The Guardian