アフリカのサバンナに生息する、最も長い体を持つ毒蛇の一種「ブラックマンバ」。
そしてオーストラリアの内陸部に生息する超強力な毒を持つ「ナイリクタイパン」。
人間にとっても致命的な毒蛇であるこの2種同士が戦った場合、はたして勝利するのはどちらでしょう?
メルボルン大学の毒物の専門家、ティモシー・ジャクソン(Timothy N.W.Jackson)氏は、 実際には生息域の違いから相まみえることのないこの両者が戦った場合、どういう結末を迎えるのかを解説しています。
毒蛇の戦い方は2つ、「毒」と「格闘」
毒蛇が戦いに使用する武器は二つです。
一つは「格闘」、つまり取っ組み合いをして相手を締め付けることです。
もう一つは「毒」です。
ブラックマンバはキングコブラに次いで長い体を持つ蛇で、その毒は非常に強力かつ量が多くまた即効性があり、血清のある現代でも、治療が遅れれば死亡する確率が高い危険な毒蛇です。
一方のナイリクタイパンも、体長はブラックマンバに劣るものの、一噛みで成人男性100人を殺せるほどの強い毒を持つ危険極まりない蛇です。
ではブラックマンバとナイリクタイパンが出会った場合、戦いは格闘と毒を使った攻撃のどちらで行われるのでしょうか。
ここで戦いに入る前に、両者の持つ毒の違いについて理解しておきましょう。
ブラックマンバとナイリクタイパンの得意技は異なる
Credit: The Conversation
ナイリクタイパンの毒は全ての毒蛇の中で最も強力であり、その成分は餌であるマウスに対して効くように設計されています。
一方ブラックマンバの毒には即効性があり、またナイリクタイパンとは違い、鳥類に対しても効果があります。
ジャクソン氏は、鳥類にも効くブラックマンバの毒は戦いに大きな影響を与えると指摘します。
それは鳥類の祖先が恐竜であることに由来しています。
化石の記録から恐竜の系統に属しているとされる鳥類は、実際トカゲ以上にクロコダイルと近縁な関係にあり、それはすなわち鳥類が、爬虫類のグループの一種であることを意味しています。
蛇も爬虫類であることから、ブラックマンバの毒はナイリクタイパンに対してもよく効きます。
もし両者の戦いが毒によって行われた場合、ブラックマンバの一噛みはナイリクタイパンにとって致命的になります。
ではもう一つの戦い方である格闘はどうでしょうか。
ブラックマンバは非常に素早い動作をします。
一方でナイリクタイパンはブラックマンバ以上の筋肉を持っています。
戦いが取っ組み合いの接近戦で行われた場合、ナイリクタイパンの締め付けはブラックマンバの行動を封印し息の根を止めるでしょう。
Credit: The Conversation
爬虫類にも即効性のある毒を持つブラックマンバと、強力な筋肉を持つナイリクタイパン。
はたして両者の得意技の違いは、戦いの行方をどう左右するのでしょうか。
一番強い毒蛇――それは相手よりも体が大きい毒蛇
残念ながら、ブラックマンバとナイリクタイパンが現実に戦うことはありません。
蛇はむやみに戦おうとはしないため、もしお互いがどこかで遭遇したとしてもおそらく戦闘は起こりません。
それでも戦いを想定するのならば、勝つのは「その日に体が大きかった個体」になります。
大きな蛇は小さな蛇を餌とすることがあります。
蛇は基本的に自分よりも大きな個体と戦わないため、もし両者が戦いを選択した場合、それは一方が他方を食べるためであり、またどちらも勝算があると見込んでいることを意味しています。
ジャクソン氏は、蛇は他の蛇を食べることがあるとし、実際にキングコブラのような小さな蛇を食べることを専門にしている種もいると話しています。
ブラックマンバとナイリクタイパンが戦うことはありませんが、もしそれが起こった場合両者の体格はほぼ同じであると考えられるため、戦いの行方は、毒や筋力の強さではなくほんの少しの運によって左右されるでしょう。
ジャクソン氏は、毒蛇が自分よりも大きな動物との戦いを好まないという事実は、人間にとって、自然からの貴重な教訓であると指摘します。
そして「もし毒蛇に遭遇したとしても放っておけば、向こうもこちらを放っておいてくれる」と述べ、むやみに毒蛇に近づいたりしないように促しました。
結論は次のとおりです。
① ブラックマンバとナイリクタイパンが戦うことはないが、もし戦いが起きたならば、勝つのは体の大きな個体。
② 毒のみでの戦いは、爬虫類に対しても強い毒性を持っているブラックマンバが勝利。
③ 格闘のみでの戦いは、強力な筋肉を持つナイリクタイパンが勝利。
④ 毒蛇には近づかずに放っておきましょう。
どんなに強い毒を持っていても自分より大きな動物とは戦わないんだねー
つまり蛇が戦いを選択した場合、既に勝利は決しているということだな
毒蛇に遭遇しても刺激するのはやめよう……
References: The Conversation