人間の社会ではおじいちゃんやおばあちゃんは尊敬される存在です。
昔話をしたり長い人生で得た知恵を使って子どもや孫たちを助けるのは人間の家族の特徴といってもいいでしょう。
では動物の場合はどうなのでしょう。
人間にみられるような祖父母の行動は動物の家族でもみられるのでしょうか。
地球上のほとんどの種にとってその答えは“ノー”です。
――しかし何事にも例外があります。
動物のおばあちゃんは強くてやさしい
フィンランドのトゥルク大学の生物学者であるMirkka Lahdenperä氏は、動物の寿命が祖父母との関係性を希薄にしている一つの要因と語ります。
赤ちゃんが生まれた時に祖父母は亡くなっているか、その場所にはもう住んでいません。
またほとんどの種は資源を奪い合うことを避けるために別の地域に広がっていくので、赤ちゃんが祖父母に出会う確率は低いと付け加えました。
しかしLahdenperä氏はいくつかの例外があることも認めています。
ハヌマンラングール
例えばインドに住むオナガザルの一種ハヌマンラングールは、人間や犬、他のライバルたちから積極的に自分の孫を守ることが知られています。
いくつかのメスのハヌマンラングールは自分の孫に特別な扱いをし、グルーミングをしたり、若い個体と激しく争っているときには止めに入ったりもしました。
マッコウクジラ
Photo by Mother_and_baby_sperm_whale | Inf-Lite Teacher | Flickr
また多くのクジラ種でも祖母のやさしさをみることができます。
カナダの動物学者Anne Innis Dagg氏によると、マッコウクジラのグループでは母親がエサを求めて水中に降下している間、おばあちゃんが若いグループの面倒を見ることがあります。
シャチ
同じく海で活動するシャチにも祖母と孫のつながりが存在します。
シャチは天敵がおらず長生きなため、出産を終えた後何十年も生き続けることができます。
年長のシャチは自分の孫たちが苦しい時期に生き残るために、食べ物を見つける場所について手助けをすることが知られています。
象
象の群れにも家族の絆があります。
Lahdenperä氏によると通常子供の象は80歳前後まで生きる彼らの祖母によって導かれるグループで育てられるといいます。
群れの中のメスたちは互いに親密な絆で結ばれており協力して若い世代を育てます。
ミャンマーの木材業者の元で使役されている象を調査したところここでも祖母が子供の生存に大きな役割を果たしていました。
働かされている象たちは必ずしも親子単位なわけではなく、離れ離れになってしまうこともありました。
Lahdenperä氏は象たちの記録を調べ、子供の象の近くに母親がいなくても祖母がいたならばその生存率が上がることを発見しました。
生存率は祖母や母親がいない場合の8倍もありました。
Lahdenperä氏はこの”祖母効果”がどうして起こるのかについてはまだ明確ではないとしながらも、年長の象が長生きの間に身につけた知恵が影響しているのではないかと推測しています。
意外な種にまで及ぶおばあちゃんの愛
Photo by Derek Keats/Flickr
人間だけでなく他の哺乳類や海の生き物の中にも、孫に対して手助けをする種がいることがわかりました。
しかし研究はもっと下のグループにも及びました。
2010年にCurrent Biology誌に掲載された研究結果によると、「Quadrartus yoshinomiyai」とよばれるアブラムシの一種は、繁殖をやめた年配の個体が自分の親せきを守ることがわかっています。
さらに2007年の別の研究では「セーシェルヤブセンニュウ」というヨシキリ科の鳥が時々自分の子孫たちの子育てを手伝ったことを報告しています。
鳥や昆虫でさえ子孫を守り育てようとしているなんてちょっと驚きですね。
これまでの研究結果は全て祖母、つまりおばあちゃんの愛情を示すものでした。
ではおじいちゃんはどうなの?――そんな声が聞こえてきます。
これについてLahdenperä氏は動物界ではオスが子孫の世話をすることはめったにないと語っています。
その理由は、オスは自分の子孫を生産することに集中しているからだと述べています。
種の存続は重要な仕事ではありますが……おじいちゃんも少しくらいは子どもや孫の面倒をみてほしいものです。
人間の場合、祖父が孫と積極的に関わることは精神的な健康や幸福に貢献するということがわかってきています。
動物や昆虫のオスたちは自分のことで忙しいようですが、私たち人間は――男女を問わず――家族を大事にしていきたいですね。
References:LiveScience