戦うを選んだあなたは、リセットボタンに手を伸ばすか、ふっかつのじゅもんを用意する必要があります。
逃げるを選んだあなたは高確率で“まわりこまれて”しまうでしょう。
木に登った場合は……もう二度と生きて地面を踏めないおそれがあります。
一生の間に熊に遭遇することはそう多くはないでしょうが、昨今の自然環境の破壊や気候変動により野生生物と人間が出会う確率は上昇しています。
危険な生物はたくさんいますが熊ほど命の危険に直結する動物はいません。
熊の危険については海外でも同じようで、熊遭遇時マニュアルのようなものがいろいろと出回っていたりします。
そこで今回はためになる「種族別熊対策」についてお伝えします。
熊の特徴や性格
戦いに勝つにはまず相手を知ることから。
そもそも熊についてみなさんはどれだけのことを知っていますか。
狂暴、デカい、はちみつが好き、死んだふりが有効……などいろいろあると思いますが、まず第一に重要なことは“熊は人間と戦いたくない”ということです。
統計によれば、熊が人間を殺すよりもはるかに多くの熊を人間は殺しています。
熊は元来臆病な生き物ですからむやみに人間を襲おうとしません。
それは元々生活圏が異なるため熊にとって人間は未知の存在だからです。
……しかし人間のほうはそうではありません。
昨今、自然破壊や開発により熊の生息域が狭められているという現状があります。
食べるものを得るために人里に降りてきた熊がハンターに仕留められたという話はよく耳にします。
こうした熊と人の生活圏の接触は日本だけでなく世界各地で発生しています。
最近ではイエローストーン国立公園で2011年と2015年に熊の襲撃による死亡事故が起きました。
熊が人間を攻撃するときは、大抵飢えているときか驚いたときです。
生活圏の縮小、人の侵入、食料不足などの問題は熊の世界にとって一大事です。
この現状が変わらない以上、人と熊との接触は増え続けていきます。
できることなら会いたくない相手ではありますが、そうは言っていられないときがくるかもしれません。
こちらに戦う意思がないことを相手が理解してくれるとは限らないのです。
いざという時にパニックにならないためにも自分の身を守る方法を学んでいきましょう。
ヒグマ
ヒグマはヨーロッパからアジアにかけてのユーラシア大陸北部に生息し、日本では北海道で個体を確認できます。
ホッキョクグマと並んで熊の中では最大の体長を誇り、日本国内においては哺乳類の中で一番大きい種になります。
ツキノワグマと似ていますが、ヒグマのほうが一回り以上大きく攻撃的です。
オスの成獣で体長2.5mから3m、体重は250㎏~500㎏もあります。
筋肉が非常に発達しており、肩の部分が大きく盛り上がって“こぶ”のようになっているのが特徴です。
どう考えても動物園以外では出会いたくない相手ですが、もしヒグマに遭遇してしまったら次の行動をとりましょう。
山に入るときには忘れずに熊撃退スプレーを持っていきましょう。
スプレーを噴射するのに手間取ることは命取りになりかねないので、常に手の届く場所(フロントポケットや背負っているリュックのドリンクホルダーなど)に携帯しておきましょう。
アメリカなどでは威嚇発砲したり実際に熊に向けて発砲するよりもはるかに効果的であるとされています。
森林警備隊は必ず携帯するそうなので、常に常備し使い方について知っておくのが望ましいでしょう。
ヒグマの姿が見えたら、隠れたりこっそりとしたりしないで下さい。
熊は元来臆病ですが、見知らぬ生き物を見たらパニックを起こすことがあります。
彼らに自分がここにいることをさりげなく伝えるのが効果的です。
歌を歌ったり、口笛を吹いたりして音を立てましょう。
しかしもしこちらに気づいていないヒグマを見つけたならば邪魔をしないようにしましょう――わざわざ危険に飛び込む必要はありません。
楽しいハイキングやキャンプが終わっても油断しないでください。
もしごみをその辺に捨てたりでもしたら、においにつられてヒグマがやってきている可能性があります。
ちょっとした小さなごみでさえ、ヒグマにとっては魅力的なえさになります。
誰も見ていないからといってモラルまで捨ててしまうと後々大変なことになるかもしれません。
また熊は犬のにおいに敏感です――犬はおうちで留守番していてもらった方が賢明です。
ヒグマに遭遇したら、堂々と落ち着いて、ゆっくりと熊撃退スプレーに手を伸ばしてください。
熊は立ち上がることがありますが、それは好奇心の現れなので冷静でいることが肝心です。
熊から目を離さずゆっくりと後退しましょう。
もしこちらにやってくるようならば狙いを定めてスプレーをします。
最適な距離は大体12mから15m。
製品にもよりますが、スプレーの噴射距離は大抵10m以下のものが多く、これでは熊の撃退には役立たないと思いがちです。
しかしこのアイデアは熊に直接スプレーを噴射するのではなく、自分と熊との間に“スプレーの壁”をつくるものです。
冷静さを保ち熊との距離を離すことが出来れば、生存の可能性はぐっと上がることでしょう。
相手がひるまずに威嚇行動を続け、こちらに距離を詰めてきた場合は、その場に伏せて首とお腹を守って下さい。
ちょうど胎児が丸まるような形になりじっとしていましょう。
熊はこちらを脅威とみなして無力化しようとしてきます。
地面に伏せてじっとしている間、あなたには反撃の手段はありません。
この場合は相手に、あなたが死んだのだと思わせることが最善の策になります。
首とお腹を守りつつ死んだふりを続ければ、相手は興味を失い去っていく可能性があります。
でももし相手が去ったとしてもすぐには起き上がらないでください。
ヒグマは相手が死んでいることを確認する習性があることで知られています。
ですから少なくとも20分間はそのままでいましょう。
非常にタフな選択肢ばかりですね。
距離を保った状態で撃退できればそれがベストですが、もし接近された場合は死んだふりをするのが最も効果的だとされています。
反撃をしてもまず勝てませんから、とにかく冷静に落ち着いて死んだふりをしましょう。
クロクマ・ツキノワグマ
クロクマ(日本ではツキノワグマ)はヒグマよりは小さく攻撃的ではありません。
しかし人間にとって脅威なことにかわりはありません。
ツキノワグマは、日本では本土にも生息していて、近年遭遇する機会が増加しています。
(クロクマは別名アメリカグマといい日本で遭遇することはありません)
ツキノワグマに遭遇した場合は次の行動をとりましょう。
ヒグマ以上に環境変化による食料問題にさらされているのがツキノワグマです。
畑や民家に侵入して食べ物をあさることが現実にあることだという認識を持って下さい。
ヒグマの場合と同じように熊撃退スプレーを身近なところに確保しておきましょう。
そしてごみは密閉された場所に捨てることを徹底しましょう。
それだけで熊の襲撃の可能性を減らすことができます。
もしばったり遭遇したとしても決して慌てないでください。
ヒグマよりも攻撃的でないツキノワグマに対しては、あなたの存在を主張することが有効な手段となります。
大きな声で自分がここにいることを主張しましょう。
腕を振って地面を叩き、出来る限り自分を大きくみせましょう。
決して背を向けて走ってはいけません。
ツキノワグマは木登りが得意です。
もしあなたが木に登ることで熊から距離をとろうとすれば、相手はあなたを間違いなく追いかけてきます。
木の上でほっとするどころか、二度と生きて地面を踏めないかもしれません。
遠くにいる場合は熊撃退スプレーを使用してください。
しかしそれでもひるまず近寄られた場合は、ヒグマの場合のように死んだふりをするよりも反撃するほうが得策である場合があります。
大声を出し身体を使って自分の存在を主張します。
そして身近にあるものを武器として使用してください。
熊の弱点は鼻とその周辺なので、狙いを定めて叩くか蹴るかをして下さい。
何もない場合でも、素手で撃退できる可能性は十分にあります。
重要なのは相手に背を見せないことです。
反撃が適切であれば、逃げるのはあなたではなく熊のほうになるでしょう。
ヒグマに比べると幾分難易度が下がったような気がします。
……それでも出会わないに越したことはないですが。
ホッキョクグマ
ホッキョクグマは北アメリカとユーラシア大陸の北部、そして北極圏に生息している最大の熊の一つです。
体長2m以上、体重は500㎏以上の個体もいて、まさに熊界の王者といって過言ではないでしょう。
とはいえわたしたちがホッキョクグマに遭遇するのはおそらく動物園の中だけでしょう。
しかし人生何があるかわかりません。
知識としてホッキョクグマに遭遇した際のサバイバルマニュアルについて知っておくのも悪くはないでしょう。
ホッキョクグマに遭遇した場合は次の点に留意してください。
……身も蓋もありませんが、それほどまでにホッキョクグマは人間にとって難易度の高い相手です。
ホッキョクグマは限定された寒い地域でしか生息していないため、人間のことを見慣れていません。
ですからおそらくはあなたのことを、友好的な相手ではなく敵か獲物としてみなすことでしょう。
そんな絶対絶命の際にも基本的な行動は一つです。
絶対に逃げないでください。
そして、自分の存在を相手に知らしめてください。
少ない確率かもしれませんが、背を向けて逃げるよりは生き残る確率が上がることは間違いありません。
下の動画は実際にホッキョクグマを威嚇して撃退しているものです。
熊がこちらを珍しがっている様子がわかります。
持っているものを総動員してください。
熊撃退スプレーがあるのならば、北極の風に吹き飛ばされないように注意をして使用しましょう。
大声を出す、道具を使って存在を知らせる、そして目を見て決してひるまないようにして下さい。
でも死んだふりだけは通用しないかもしれません……巨体を支えるためにたくさんの食事を必要とするホッキョクグマはあなたをカロリーとしてしか見ていないでしょうから。
さすがにホッキョクグマについては雑学程度にとどめておけばいいかと思います。
それでも熊という、人間にとって致命的な動物が、どこか遠くの世界ではなく、わたしたちの身近にも確かに存在しているということを忘れてはいけないでしょう。
動物園や映画の中の熊さんたちは巨体に似合わず可愛さを見せてくれますが、野生の場合そうはいきません。
山の中に出かける予定があるのならば――そしてもし北極に向かう理由があるのならば――熊撃退スプレーだけは持参していったほうがいいかもしれません。
現実は“リセット”も“ふっかつのじゅもん”もありませんから、くれぐれも準備だけはしておいてください。
ここだな、悪さをする熊が出没するのは。私が相手になってやろう!
き、気をつけてお姉ちゃん!
おー、よしよし!いい子だねー!
意外とモフモフしてて可愛い……
おい!お前たち……ってどういうことだ?
なついちゃったみたいだね~♪よかったよかった♪
熊に遭遇した際に取るべき行動についてのお話でした。
読んでいただきありがとうございました!
Reference:How to survive a bear attack