世界には戦争や紛争で設置された地雷が数多く残されています。
その数は7000万から1億とも推定されています。
地雷は現地の人々の健康と福祉に大きな影響を与える負の遺産であり、迅速な除去が求められます。
しかし埋められた地雷を発見するのは容易ではなく、被害が後を絶たないのが現状です。
地雷の除去は、そのほとんどが金属探知機を使って行われます。
この方法は、釘などの地雷とは直接関係ないものも検出するため、非常に時間がかかります。
そして万が一地雷が爆発した場合、人への被害は避けられません。
こうした地雷除去に伴う危険を軽減するため、現在、動物を使った研究が進められています。
アフリカではすでに、地雷除去のスペシャリストとして、ネズミが活躍しています。
鋭い嗅覚で地雷を発見する「ヒーローラット」
ベルギーの起業家バート・ウィートジェンス氏がタンザニアで立ち上げた非営利団体APOPOは、地雷除去にネズミを利用しています。
従来の人を使った地雷除去は命の危険があり、また費用や時間もかかります。
これはアフリカなどの貧困地域において、地雷除去が一向に進まない理由の一つです。
APOPOは、現地の人が安価で安全に地雷除去を行えるよう、火薬のにおいを覚えたネズミに、地面を探索させる方法を開発しました。
アフリカオニネズミ (Giant pouched rat/Public Domain)
地雷を見つける重要な役目を担うのは、アフリカ原産の大型のネズミ「アフリカオニネズミ (Giant pouched rat)」です。
アフリカオニネズミは体長が25~45cm、体重が1~1.5kgほどの大型のネズミで、鋭い嗅覚が特徴です。
このネズミは頭もよく、単純な行動であればすぐに覚えてしまいます。
また体重は、地雷を起爆させるほど重くはありません。
APOPOは尊敬の念を込め、ネズミたちを「ヒーローラット (HeroRAT)」と呼んでいます。
地面を嗅ぐヒーローラット (Credit: APOPO)
地雷の探索は、二人のスタッフとヒーローラットの組み合わせで行われます。
まずスタッフが二手に分かれ、一定の距離をロープで結びます。
その後ヒーローラットがリードと共にロープにつながれ、スタッフ間を行き来します。
ネズミは地面を嗅ぎながら前進し、地雷を発見するとスタッフから餌をもらえます。
見つかった地雷は、周囲の人を避難させてから処理されます。
一匹のヒーローラットは、テニスコート一面分の面積を約30分で探索します。
この作業を従来の金属探知機を使った方法で行う場合、最大で4日の時間がかかります。
ヒーローラットの嗅覚は、結核の予防にも役立てられています。
アフリカでは毎年結核により200万人以上が命を落としています。
結核菌はツベルクリン反応検査のほか、レントゲンやCTで検出できますが、アフリカなどの低中所得国では、いまだ十分な医療サービスが提供されていません。
APOPOは現在、アフリカオニネズミの嗅覚を使って、人の唾液から結核菌を見つける研究を進めています。
パートナークリニックではこの手法を使い、すでに陽性患者の数を、従来よりも40%多く特定できています。
一匹のヒーローラットは、唾液サンプル100個を20分でチェックできます。
これと同じ作業を人間が行うには、少なくとも4日が必要です。
今後さらに研究が進めば、より多くの人が、安価で適切な検査を受けられるようになります。
ヒーローラットは火薬だけに反応するから効率的に探索できるんだよ
地雷を見つけたらたくさん餌をあげてほしいね
Reference: APOPO,Treehugger
(2019年1月の記事に加筆、修正を加えました)