鳩が群れで飛び立つとき、彼らは誰の指示で行き先を決めているのでしょうか?
それとも目的地はいつも気まぐれなのでしょうか?
米国サウスイースト大学と中国鉱業大学の研究グループは、鳩の協調行動を調べるためにデータマイニングアルゴリズムという手法を使い、鳩の群れの行動に一定の法則や指導者がいるのかどうかを確かめる実験を行っています。
鳩などの鳥だけでなく多くの生物は群れを形成していますが、それらがどのように発生しまた維持されていくのかについては多くの謎があります。
動物の群れの協調行動には3つの基本ルールがあるとされています。
それは、仲間との衝突を避けること、運動と速度を周りと一致させること、中心付近に留まることの3つです。
しかしこの行動は遺伝子に組み込まれた自然のものなのか、それとも群れの中に存在するリーダーによって決まるのかはよくわかっていませんでした。
新しい研究は、鳩の群れの中には中心的な個体が存在しており、それが他の鳩の行動に影響を与えていることを明らかにしています。
鳩の群れのリーダーは、中心に近く速度が平均的な個体
Image by PublicDomainPictures from Pixabay
研究グループは10羽で構成される鳩の群れ3組を対象に、「k-nearest neighbor」と呼ばれるデータマイニングアルゴリズムと、高解像度のGPSデータを用い、飛行中の鳩たちの間にある因果関係について調査しました。
全ての鳩の群れの中での位置や飛行速度は時間と共に記録され、それらの蓄積されたデータはグループ内の各個体が相互にどう影響を及ぼしているかについてのヒントを与えます。
「k-nearest neighbor」によって導き出された結果は、3つの鳩の群れには他の個体に影響を与える「インフルエンサー」が存在しているということでした。
群れの鳩たちは互いに影響を与え合っていましたが、中でもインフルエンサー、つまり群れのリーダーには特徴がありました。
それは、リーダーは他の鳩に比べて“最も群れの中心に位置し”、“最も平均速度に近い個体である”ということです。
また群れのリーダーは常に一定ではなく、飛行中に変わることもありました。
これらの結果から研究著者は「群れの中心にいる平均速度に近い個体は他の鳩よりも影響力を持っている」と述べ、鳩の群れの中での位置と飛行方向は、相互作用において重要な2つの要因であると結論づけています。
鳩の群れがどのように機能しているのかについては過去にいくつかの研究があり、そこでは、群れのリーダーは社会的な地位によって決まるとされてきました。
また群れの中のどこに位置しているのかによって役割が異なるという研究結果もあります。
しかし今回の研究結果は、鳩の行動がそれぞれの社会的な地位による独立したものではなく、群れの中心に位置しているリーダー鳩によって決まる可能性を示唆しています。
研究者は鳩で見られたこうした協調行動の仕組みは、他の動物の研究にも役立つだろうとしています。
また今後、鳩の免疫細胞が集団行動にどう影響を与えるのかについての研究を行う予定です。
人や獣にびっくりして急に飛び立つ鳩の群れを目にすることがあります。
疑問なのは、その時一瞬で、リーダー鳩が他の鳩に合図を送っているのか、という点です。
こうした突発的事態の場合、リーダーの指示を悠長に待っていては命を危険にさらす可能性があり、時間的猶予はないと考えられます。
その点今回の研究結果は、飛んでいる最中にもリーダーが変わることを確認していることから、実際には、鳩たちは飛び立った後に“たまたま”中心にいた鳩をとりあえずのリーダーにしている可能性があります。
今後のさらなる研究により新たな事実が判明するかもしれませんが、鳩たちのお互いとの柔軟な関係性が、群れを維持するための秘訣なのは確かでしょう。
リーダーがコロコロ変わるなんて面白いねー!
適当に群れているだけじゃなかったのか……
References:EurekAlert!,AIP.Scitation