400年ぶりの復活 イギリスのビーバーが川で生活する権利を獲得する

動物
(Credit: Mike Symes/Devon Wildlife Trust)

イギリス政府は5年間の調査結果を元に、デヴォン州の川に住み着いた15のビーバーの家族について、引き続き生活してもよいとする決定を下しています。

イギリスの野生のビーバーは既に絶滅していますが、2013年頃からデヴォン州のオッター川で姿が確認されるようになりました。

それ以後もいくつかのグループが現れ、保護活動家と作物への被害に悩む農家との間で、ビーバーの存続に関する議論が巻き起こりました。

そのため2015年から、大学や自然保護団体の研究者によって、ビーバーの自然環境に与える影響についての調査が行われてきました。

一度絶滅したビーバーの生存権をイギリス政府が正式に認めたのは、今回が初めてのことです。

 

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ビーバーの再導入は公共の利益につながる

 

イギリスの野生のビーバーは、肉や毛皮、香料(カストリウム)のために乱獲され約400年前に姿を消しました。

しかし2013年に1組の家族がオッター川に出現して以降徐々に数が増え、各地でダムや木をかじった跡などが見られるようになりました。

ビーバーがどこからやってきたのかは未だに判明していませんが、何者かによって放たれたアメリカビーバー(※)であるという指摘があったため、地元の住民、研究者、政府の間で処遇についての様々な意見が交わされてきました。

(※イギリスに元々生息していたのはヨーロッパビーバー)

 

(Credit: Mike Symes/Devon Wildlife Trust)

 

過去の調査では、ビーバーの作ったダムにより川の流れが変わり畑に流れ込む例が確認されています。

また菜食主義者のビーバーによって作物が荒らされる被害も報告されています。

突然現れたビーバーは害獣以外の何ものでもなく、農家の多くは駆除を求めました。

 

一方で調査チームは、ビーバーが生態系を豊かにする実例や、洪水などの被害を和らげる効果を持っていることなどを証明しました。

エクセター大学のリチャード・ブレイジャー教授たちのチームは、ビーバーの作るダムが川の生態系を豊かにするだけでなく、糞尿や化学物質をろ過したり、魚の数を増やすことでそれを餌とする野鳥にも良い影響を与えていると報告しています

またダムは地球温暖化が進む時代において、干ばつと洪水による被害を軽減することもできます。

ダムにせき止められた水は乾いた農地に潤いを与え、激しい降雨の際には水の流れを抑え洪水の発生を防ぎます。

 

ビーバーを存続させる決定をしたレベッカ・パウ環境大臣は、「将来的に、ビーバーは公益とみなされる可能性がある」と述べ、ビーバーのもつ「自然管理ツール」としての役割を評価しています。

 

 

ビーバーの調査に協力したデヴォン・ワイルド・トラストのピーター・バージェス氏は、ビーバーの利点を地元の人たちに理解してもらうことがとても重要だと話します。

一部の農家は、局地的な洪水をビーバーの仕業だと考えていました。

バージェス氏は彼らと連絡を取りそれが誤解であることを説明し、さらに被害に対するサポートも提供しました。

バージェス氏は、土地を管理する人物にとって、問題が起きた際に話せる相手がいることは助けになると指摘し、「それが良いアプローチであるならば、動物が受け入れられる可能性ははるかに高くなる」と述べています。

 

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イギリスでは今回の決定を受け、他の絶滅した動物についても再導入を検討すべきだという声があがっています。

政府はこの問題について、年内に協議を行いたいとしています。

ブレイジャー教授は、「ビーバーは生物多様性を豊かにするとともに二酸化炭素の削減にも役立ち、また観光資源としても地元経済に貢献できる」と述べ、「ビーバーの利点は、彼らを管理するコストをはるかに上回る」と強調しています。

 


 

 

しぐれ
しぐれ

ビーバーを復活させると他の生き物に影響が出るという意見もあるみたい

かなで
かなで

うまく共存して自然がもっと豊かになるといいね

 

References: The Guardian,BBC