コウモリは反響定位(はんきょうていい、エコーロケーションとも)と呼ばれる能力を使って、飛行したり餌を捕獲したりしています。
反響定位は対象物にあてた超音波の跳ね返りからその位置を知るもので、視力の悪いコウモリにとって生存に欠かせない能力の一つです。
イギリスの研究者は、交通量の激しい高速道路から出る音が、近くに生息しているコウモリにどのような影響を与えるのかについて調査しています。
研究結果は、人工的な音が遠く離れた場所のコウモリにも多大な影響を及ぼすことを明らかにしています。
車の騒音はコウモリの反響定位に悪影響を与える
英国サセックス大学と、哺乳類の保護を目的としている慈善団体「ヴィンセント・ワイルドライフ・トラスト(Vincent Wildlife Trust)」の研究者は、高速道路で録音した音を様々なコウモリに聞かせ、それが彼らの行動に悪影響を与えることを発見しています。
実験に使用された音は、デヴォン州を走る交通量の多い4車線道路から録られたもので、この道路の夕暮れ時には、1分当たり26台の車が通過していました。
実験はアブラコウモリ、ドーベントンコウモリ、キクガシラコウモリなど合計5種のコウモリに対して行われ、生息地域の近くでノイズを発生させた後、20メートル離れた場所に設置した探知機からコウモリの行動を監視、記録していきました。
その結果、高速道路の騒音は全てのコウモリの反響定位に影響を与え、餌である蛾のような昆虫の捕獲を難しくしていることがわかりました。
またコウモリたちは大きな音を嫌がるだけでなく、そこから距離をとろうとしていることも明らかになりました。
研究著者の一人でサセックス大学の環境生物学の教授であるフィオナ・マシューズ(Fiona Matthews)氏は、「コウモリも私たちと同じように道路から聞こえてくる騒音にいら立ちを感じている」と述べ、道路がコウモリの個体数に与える悪影響は、考えられているよりも広範囲に及ぶ可能性が高いと指摘しました。
実験では騒音の影響が、探知機の設置された場所よりもさらに遠くのコウモリにも及んでいることが示されています。
マシューズ教授は、低周波の道路騒音は50メートルをはるかに超えて伝わるとして、新しい道路が建設されるときだけでなく、交通の流れが大幅に増加する際には、常に生態系に与える影響についての評価が必要になると強調しています。
環境の変化に敏感なコウモリは、開発や道路の建設、人工的な光などによって生息地が分断されています。
研究に資金を提供したヴィンセント・ワイルドライフ・トラストのヘンリー・スコフィールド(Henry Schofield)博士は、「コウモリは次第に餌場にアクセスできなくなってきている」と説明し、道路からの騒音は、コウモリの生活の質を低下させる要因のリストに新しく加わることになるだろうと話しています。
研究者は、最近の新型コロナウイルスによる交通量の減少は多くの動物種にとって恩恵となっていると指摘し、この状況がコウモリにどんな影響を与えているのかを今後調査していきたいとしています。
研究結果はEnvironmental Pollutionに掲載されました。
車が多い場所に生息しているコウモリは大変な思いをしてるんだね
アブラコウモリは日本でも都市部や住宅地で見ることができるよ!
References: The Guardian