人間とほとんど同じ?チスイコウモリの友情と絆が示す動物の社会性

動物も人間と同じような友情や絆を持っているのでしょうか?

犬や猫など哺乳類の多くには、ある程度のお互いへの信頼のようなものが見てとれます。

コミュニティを維持していくことは生存率を高めることにつながるため、野生の動物たちは、親子だけでなく、同じ地域の仲間に対し友好的な姿勢を見せることがあります。

哺乳類の絆については何となく“ありそう”なイメージですが、それがコウモリとなったらどうでしょう?

 

動物の血を吸う「ナミチスイコウモリ」は助け合いをする動物として知られています。

彼らは食事にありつけない仲間に対し餌(血)を分け与えることをします。

科学者たちはこの特性が、一定のコミュニティに限定したものなのかどうかずっと疑問に思っています。

もし別の場所で生まれたコウモリや会ったこともないコウモリにも友好的な行動を見せるのであれば、人間よりも柔軟な関係構築能力があることを示す結果となります。

 

人間は家族や集団の中で友情や絆を強くすることができ、また全く知らない相手であっても、時間をかけることで良い関係を築く能力を持っています。

他者との友好的な関係はコミュニティの健全な維持と発展には欠かせないものです。

果たしてこれらの特性は人間だけの特別な能力なのでしょうか?

それとも動物の持っている友情や絆には、人間にはない特別な性質が秘められているのでしょうか。

 

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ナミチスイコウモリの“利他的行為”

 

オハイオ州立大学の進化生物学者、ジェラルド・カーター氏たちの研究チームは、他の動物の血を吸うことで知られる「ナミチスイコウモリ(Desmodus rotundus)」が、群れ以外のグループに対しても友好的な絆を形成するのかどうかを実験しています。

ナミチスイコウモリは動物の血のみを餌とするいわゆる“吸血コウモリ”で、非常に優れた社会性を持っていることで知られています。

100匹から時には1,000匹にも及ぶ大規模なコミュニティの中では、お互いを助け合うための行為が頻繁に見られます。

夜行性のナミチスイコウモリは獲物となる動物に近づき、自身の体重の40%もの血液を吸うことができますが、毎晩血にありつけるわけではありません。

カーター氏によると3日間血を吸うことができなければ、ナミチスイコウモリの死ぬ確率はぐっと高くなります。

 

しかしナミチスイコウモリの群れには、血を吸うことに失敗した個体を守るセーフティネットが用意されています。

 

ナミチスイコウモリは自分の食事の一部を逆流させて、血を得られなかった別の個体に分け与えます。

 

ナミチスイコウモリのこうした「利他的行為」は、動物にも社会性が存在していることを示すものですが、科学者たちはこの性質が、ある特定のコミュニティに限定したものなのか、それとも種に共通したものなのかを長い間議論してきました。

単に好きな相手とだけ餌をシェアするのか、もしくは困っている相手がいたら区別することなく手を差し伸べるのか――カーター氏たちの研究チームはこれを確かめるために長期間にわたる実験を行いました。

 

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ナミチスイコウモリの社会性は人間のものと似ている

 

チームはパナマ西部に200以上あるナミチスイコウモリのコロニーから23匹を捕獲し、中央パナマのガンボア市にあるスミソニアン熱帯研究所で隔離生活をさせました。

研究所では、彼らの性質である夜行性に合わせ、特定のコウモリに対し夜間に血の食事を与えつつ、また一部の個体には食事を与えないことで彼らの中に利他的行為が発生するかを調査しました。

その結果研究所のコウモリたちは、空腹にあえぐ仲間に手を差し伸べ、互いにグルーミングすることでより深い友情と絆を形成するようになりました。

またグループの中にはお互いに対し特別な親密さを抱いていると思われるペアも発生しました。

そして隔離生活から22カ月後、コウモリたちは野生に返されました。

 

背中にセンサーが取りつけられたナミチスイコウモリ Image:Science News,YouTube

 

コウモリの背中にはセンサーが取りつけられていて、他のコウモリとの近接性(他の個体との密接の度合い)に関するデータが研究者に送られることになります。

また対照グループとして野生のコウモリ27匹を改めて捕獲し、彼らの背にもセンサーをつけ解き放ちました。

こうすることで、隔離されていたグループと元々そこにいたグループとの間の利他的行為の頻度や性質についてより正確な情報を得ることができます。

研究チームはその後8日間かけて、2つのグループから送られてくるセンサーからのデータを集め分析しました。

 

結果は……コウモリの友達はコウモリの友達のまま、でした。

 

隔離されていたグループは、同じ隔離されていたグループの個体と密接な関係があったのに対し、対照グループは隔離されたグループと親密な関係を築きませんでした。

隔離されていたグループは休むときもお互いが近い場所に固まる傾向にありました。

また一部のグループは8日間の観察期間を終える前にコロニーから去っていきました。

この結果は、あるグループの中で醸成された絆はそのグループの中でだけ機能することを示唆しています。

 

Vampire bat friendships persist in the wild | Science News

 

カーター氏は、隔離されていたコウモリたちが野生の環境においても強い絆を維持していたことは重要な発見だ、としましたが、一方で観察が8日間しか行われていないため、その後彼らがコロニーの中で別の社会的絆を作ったかどうかについては今後の研究を待つ必要があると述べています。

ひょっとしたら隔離されていたグループも――時間がたてば――野生のグループの仲間として迎え入れられたかもしれません。

 

 

 


 

この研究は、動物の間で見られる社会的な絆が単純なものではないことを示しています。

カーター氏は絆を維持することはお互いの利益につながり、また信頼できるパートナーに固執するのは、普段グルーミングや餌をやり取りしない相手に頼るよりも理にかなった行動だと話しています。

 

動物が損得勘定で相手を選んでいるのかはわかりません。

しかしナミチスイコウモリの研究は、動物たちの絆が遺伝子に刻み込まれた絶対的なものではなく、相手や環境によって変化する――つまり人間とほとんど変わらないものであることを明らかにしています。

 


 

 

しぐれ
しぐれ

同じ種類の動物でも知らない相手には警戒したりするんだね

かなで
かなで

でもすぐに仲良くなれちゃうのも動物のスゴイところなんだよ!

 

 

 

References:ScienceNews