他のコウモリ種と比べて耳が短くその哺乳類的な顔立ちから「空飛ぶキツネ(Flying fox)」とも呼ばれる「オオコウモリ」は、熱帯に生息する大型のコウモリです。
オオコウモリはその名前が示すように、大きいものでは翼を広げた体長が2メートルもあり、果物や花の蜜などの植物を主食とすることが特徴です。
日本では小笠原諸島や琉球諸島などに生息しています。
今年に入り、オーストラリア東部ではオオコウモリの異変が数多く確認されています。
地面で発見されたオオコウモリは非常に衰弱しており、そのほとんどが脱水状態にありました。
獣医や環境省などが原因について調査を進めていますが、オオコウモリの異常行動は単発的に発生した出来事ではない可能性があります。
オオコウモリの異常な行動とその原因
クイーンズランドの環境省は、日中の間はねぐらに戻るオオコウモリが、ずっと餌のある木に留まり続けている例を報告しています。
この行動は通常、栄養失調と関連しています。
異常な行動が報告されたオオコウモリは、オーストラリアの環境法で絶滅の危惧にあるとされる、グレーヘッドオオコウモリ(grey-headed flying fox)と、クロオオコウモリ(black flying fox)の2種です。
環境省やコウモリの専門家たちは、オオコウモリが栄養失調状態に陥ったのは、東部地域の乾燥が長引いたことが原因だと考えています。
乾燥はオオコウモリの食料となるフルーツや木の実などの生育を遅らせたりダメにしたりする可能性があります。
また最近多くなり始めている山火事なども食料入手を困難にさせる要因です。
しかしこうした気象条件は過去にも散発的に確認されており、それだけではオオコウモリの異常行動の原因と断定することはできません。
環境省や専門家は、今年のオオコウモリの異常な衰弱は過去に例を見ないものだと指摘しています。
クイーンズランドの野生動物獣医であるタニア・ビショップ氏は、オオコウモリの治療に20年以上携わってきました。
彼女は今年のような状態を「飢餓イベント」と呼び、これは今までになかったものだと断言します。
今年のようにオオコウモリが衰弱する年を見たことはありません。ここ2週間で最も衝撃的なことは、彼らの多くがミイラのように干からびていたことです。
ビショップ氏によると、この時期はオオコウモリにとって繁殖の時期にあたりますが、病院に持ち込まれた雌のオオコウモリの多くが妊娠していないか、していたとしても非常に痩せているため最終的には赤ちゃんを失う結果になります。
赤ちゃんが生まれたとしてもそれは非常に小さく体重も軽いものでした。
ビショップ氏は既にオオコウモリが絶滅の危惧にあることを指摘し、今回の飢餓イベントがどうして起きたのかについて詳しく知る必要があると話しています。
絶滅のおそれのあるオオコウモリを救うためには支援が必要
photo by Ryan Poplin on Flickr
人道協会(Humane Society International)のオーストラリア支部のプログラム長であるエヴァン・クォーターメイン氏は、オオコウモリを支援するための介護者や獣医が必要だと呼び掛けています。
すでに多くの動物が支援を必要としており、暑さによるストレスがこの夏再びオオコウモリを襲う可能性があります。
クォーターメイン氏は、オオコウモリをはじめとした野生動物を助けるために働く獣医や介護者たちにも十分な支援が不可欠だと訴えています。
こうした動物への支援の必要性に対しクイーンズランド州の環境科学省の担当者は、今回の事態がオオコウモリの個体数にどの程度の影響を及ぼすのかは不明だとしながらも、地方自治体やオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)、そして野生生物保護のボランティア団体などと協力して引き続き状況を監視していくことを明らかにしています。
環境科学省はオオコウモリが一部のウイルスを媒介することに注意を促し、特に助けようとするときに噛まれる危険があることから、なるべく触れずに専門家に連絡するよう勧告しています。
当局によると、一部の地域では食料難のためにオオコウモリが住宅地に住み始めています。
はっきりとした原因はこれからの調査を待つ必要がありますが、担当者は、好ましくない気象条件が彼らの餌となるフルーツを奪っているのではないかと話しました。
オオコウモリに起きている困難な状況が今年だけの一過性のものならばまだ救いはあります。
しかし原因が異常気象や気候変動によるものだとしたら、今回のケースは、人類に向けられた自然からの無言のメッセージとも言えるでしょう。

コウモリって怖いイメージがあるけどオオコウモリは意外とかわいい顔をしてるんだね~

絶滅しないようにみんなで守っていかなきゃ!
References:The Guardian