2023年の夏が記録的な暑いシーズンとして記憶に刻まれるのは確実です。
人間は暑さに対し様々な方法で対処することができます。
しかし動物は近年の異常気象にどう立ち向かっているのでしょう。
エアコン、扇風機、無限の水分補給といった選択肢がなくても、動物たちはたくましく暑さと戦っています。
動物が体温を下げる方法をみていきましょう。
スプルーティング
スプルーティング(Splooting)は、2021年に初めてコリンズ英語辞典に追加された言葉で、手足を伸ばし腹ばいになるという意味合いで使われます。
2022年8月、ニューヨークの公園に、手足を広げお腹を地面に密着させるリスが出現しました。
リスのこの行動は、可愛さやどこか間の抜けた見た目から、SNSを介して広く知れ渡るようになりました。
If you see a squirrel lying down like this, don’t worry; it’s just fine. On hot days, squirrels keep cool by splooting (stretching out) on cool surfaces to reduce body heat. It is sometimes referred to as heat dumping. pic.twitter.com/pD1T3lPbBH
— NYC Parks (@NYCParks) August 9, 2022
リスがスプルーティングをするのは、誰かに拾ってもらうためではなく、生存本能によるものです。
この年の夏は非常に暑く、人間のように汗をかけないリスは、体温を下げるために冷たい地面に腹ばいにならざるを得ませんでした。
スプルーティングのような行動は元々、ヒートダンピング(heat dumping)と呼ばれ、これは熱を外に放出することを意味しています。
ミネソタ大学のリスの研究者であるシャーロット・デヴィッツ氏によると、スプルーティングは、ハイイロリスやキツネリスなどの大型のリスの種では一般的な行動で、暑い日にはしばしば、日陰のコンクリートや歩道などに体を接触させる姿が見られます。
スプルーティングは特に都市部のリスにとって、なくてはならない行動になりつつあります。
コンクリートで覆われた都市は熱がこもりやすく、動物たちは体温調節により苦労するようになります。
デヴィッツ氏は、「気候変動により全体的な気温が上昇し、猛暑と干ばつがさらに増えています。スプルーティングはリスにとって、今後ますます必要な行動となる可能性があります」と述べています。
形状変化
一部の恒温動物は暑い気候に対抗するため、自分の体を変形させています。
2021年に行われた研究では、体温を調節しやすくするために、鳥のくちばしや、哺乳類の耳などの形に変化が起き始めていることが確認されました。
くちばしや耳、脚などの突出した器官は、熱を放出するのに適した表面積を持つと考えられています。(アレンの法則)
研究ではこれを裏付けるように、オーストラリアのオウムの一種が、気温上昇に合わせてくちばしを大きくしていることが示されました。
今後世界が暑くなり続ければ、多くの動物がこのような形状変化を始めるかもしれません。
この研究に携わったオーストラリア・ディーキン大学のサラ・ライディング氏は、「これは動物が進化していることを意味していますが、ポジティブに捉えるべきものではありません。むしろ気候変動が、動物をこのように進化させていることを憂慮すべきです」と述べています。
唾液と鼻水
アカカンガルーは手をなめて体温を下げる (Michael Fraley/Flickr)
オーストラリアに生息する最大の有袋類であるアカカンガルーは暑さをしのぐため、自分の腕をなめることがあります。
腕についた唾液は時間の経過とともに蒸発し、それにより体温が下がります。
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2023年の研究では、ハリモグラが鼻水を吹き出し、暑さに対抗していることが報告されました。
ハリモグラの暑さへ対処方法は、これまで、太陽を避け地中に潜ることだと考えられてきました。
しかし観察では、致死温度に近いにもかかわらず、ハリモグラが丸太にできた穴の中に避難していることが確認されました。
この際ハリモグラは鼻孔から水分を放出し、蒸発させることで体温を下げていました。
ハリモグラは高温に非常に弱い生き物です。
鼻水を使った体温調節は、地球の気温上昇に適応した結果であると考えられます。
おしっことうんこ
コウノトリは体温を下げるために自分の脚に排泄する (Marie Hale/Flickr)
コウノトリなどの脚の長い鳥の一部は、体温を下げるために、自分の脚に向けて頻繁に排泄をします。
2021年に行われた調査では、この排泄行為は、気温と湿度が高く、日差しが強く、風速が弱いほど起こりやすいことが報告されています。
また水場よりも乾いた場所にいる鳥のほうが、体温調節に忙しくなりました。
研究者は、「動物の体温調節の理解は、気候変動が生物多様性にどんな影響を与えるのかを予測することにつながる」と結論づけています。
動物はいろんな方法で体温を下げてるんだねー
腹ばいになると結構気持ちいい……
Reference: CNN