カナダとアメリカの科学者グループは、気候変動がホッキョクグマに与える影響を分析した結果、ほぼ全ての個体が2100年までに絶滅すると報告しています。
現在地球上に生息しているホッキョクグマは約26,000頭で、ここ十数年は温暖化の影響により個体数が大きく減少しています。
ホッキョクグマは海氷の上を移動し餌をとる動物で、狩猟期間に蓄えたエネルギーを使って、夏や餌のない期間を乗り切ります。
気温上昇による氷の融解は、ホッキョクグマの狩りを難しくさせ生存を脅かします。
研究者は温室効果ガスの排出量を抑えることができない場合、早ければ2040年にはホッキョクグマの繁殖が不可能になると予測しています。
対策をとったとしても2080年には絶滅する可能性がある
「Nature Climate Change」に掲載された研究は、2つの温室効果ガスの排出シナリオを元に、ホッキョクグマの個体数がどう変化していくのかを検証しています。
現在ホッキョクグマは19の集団が確認されており、研究ではその中の13の集団について、温暖化の進行と狩りで得られるエネルギー量の関係性について分析を行いました。
その結果、現在の状態を続ける排出量シナリオでは、ほぼ全てのホッキョクグマが2100年までに繁殖できなくなることがわかりました。
また仮に温室効果ガスの排出を抑えたとしても、2080年には同様の結果になりました。
ホッキョクグマは海氷に穴を開け、獲物が下を通り過ぎるのをじっと待ちます。
彼らは厚い脂肪のおかげで何日も食べずに生きられますが、氷がなくなると餌を獲得できなくなるため衰弱を待つだけとなります。
分析では、温暖化の進行とともにホッキョクグマの生き延びられる日数が短くなりました。
また小グマは生まれたとしても母親が脂肪を蓄えていないため、生き残ることができませんでした。
温暖化の影響を受けやすいのはより南にある生息地の個体群で、カナダのハドソン湾南部とデービス海峡に生息するホッキョクグマの場合、温室効果ガスの排出が削減されなければ2040年には繁殖できなくなります。
またこれらよりも寒い地域のアラスカやロシアのホッキョクグマでも、2080年には深刻な状態に陥り、2100年にはほぼ全てが絶滅します。
研究者の一人で、ホッキョクグマの保護団体「Polar Bears International」の主任科学者であるスティーブン・アムストラップ氏は、「私たちの誰もが知っているように、全ての生き物は食べ物なしに長い間生きることはできない」と説明し、「この研究は、問題を回避するために直ちに行動しなければならないことを改めて思い起こさせるものだ」と述べています。
今回の研究は、クマの空腹時に消費するエネルギーについて標準的な数値を使用しています。
今後、氷の消失が進み餌を得られなくなった場合、実際のホッキョクグマにどれだけの肉体的負担がのしかかるのかは未知数な部分があります。
アムストラップ氏は、「これらの予測は保守的であり、温暖化の影響は論文が示唆するよりも速く生じる可能性が高い」と述べています。
北極圏の海氷は10年ごとに13%ずつ失われてるんだって
氷が解けたらホッキョクグマには行くところがなくなってしまう……
References: The Guardian,BBC