ジャイアントパンダは分類上はクマの仲間であり肉食獣です。
しかし主食は竹や笹などの植物であり、肉を食べることはほとんどありません。
これは標高の高い竹林という生息地に適した進化であると考えられています。
進化の痕跡は手に見られます。
ジャイアントパンダの手には竹を掴みやすくするためのコブ上の突起があり、これにより一日の大半を食事に費やすことができます。
一方で消化器は植物を消費するのに適しておらず、大きな体を維持するために、体重の半分ほどの量の竹を食べ続けなければなりません。
中国の科学者は食性の分析から、ジャイアントパンダは今でも完全な肉食動物であると報告しています。
ジャイアントパンダが竹を好むのは、草食に進化したからではなく、成分が肉と似ているからです。
ジャイアントパンダは肉の代わりに竹を食べている
ジャイアントパンダの食事のほぼ全てが、竹や笹などの植物です。
これは特徴的な外見と相まって、ジャイアントパンダを温和で無害な動物であると人々に認識させています。
しかし竹に含まれる成分とジャイアントパンダの消化器を考慮した場合、イメージは全く別のものになります。
中国の研究機関「中国科学院」の科学者であるFuwen Wei氏たちのグループは、ジャイアントパンダの長年の観察結果から、彼らが草食動物などではなく、実際は“超”がつくほどの肉食動物であると結論づけています。
Current Biologyに掲載された研究のなかでWei氏は、ジャイアントパンダの体には、草食、肉食の両方の特徴が見られると説明します。
ジャイアントパンダの手、頭蓋骨、顎は竹を食べるのに適した形をしており、また肉食に関連する遺伝子(うま味受容体T1R1)は機能の一部を失っています。
しかし消化器は肉食動物と同じ構造をしており、繊維の消化が得意ではありません。
草食動物は繊維の多い植物を食べますが、ジャイアントパンダが主食とする竹にはそれほど繊維がなく、代わりに多くのタンパク質が含まれています。
ジャイアントパンダの母乳や糞からは、他の肉食動物と同じような、高レベルのタンパク質が検出されています。
これらは、ジャイアントパンダが肉の代わりとして竹を食べていることを示唆しています。
Wei氏は、「ジャイアントパンダは食べるものからすると完全に草食動物だが、摂取された栄養素を考えるならば肉食動物に属する」と述べています。
ジャイアントパンダは中国奥地の標高の高い竹林に生息しています。
そこには肉食動物の餌となる獲物が少ない代わりに、似たような栄養をもつ竹が豊富に存在しています。
竹から肉と同量のタンパク質を得るのは簡単ではありませんが、周囲には天敵がいないため、たとえ消化が悪くても時間をかければ目的を達成することができます。
彼らは限定的な環境で生きていくために、竹を食べるというニッチを獲得しました。
Wei氏は、「ジャイアントパンダの食生活は一見矛盾しており肉食から草食へ移行したように見えるが、実際にはそうではなく、この適応自体も突然起こったものではない」と話しています。
ジャイアントパンダは今でも立派な肉食動物です。
新鮮な竹にはタンパク質がたくさん含まれてるんだって
ジャイアントパンダは肉が嫌いというわけではないそうだぞ
References: ScienceAlert
(2019年5月の記事に加筆、修正を加えました)