越冬する蝶「オオカバマダラ」の数が激減、今後数十年で絶滅のおそれも

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Image by jachang from Pixabay

無脊椎動物の保全活動を行っている非営利組織Xerces Societyは、毎年越冬のために北アメリカからメキシコまでの数千キロを旅する蝶、「オオカバマダラ(Monarch butterflies)」の数が、2年連続で危機的水準にあると報告しています。

オオカバマダラの数は2018年から2019年の冬に、これまでで最低となる27,000羽を記録しました。

今年行われた冬の調査ではその数が約29,000羽に微増しましたが、これは前年よりも多くの観測地点を訪れたことによるものです。

1980年代、カリフォルニア西部には約450万羽のオオカバマダラが生息していました。

Xerces Societyのオオカバマダラの保護の専門家であるエマ・ペルトン氏は、今回の調査結果について「オオカバマダラの数が緩やか回復することを期待していたが、残念ながらそうならなかった」と述べ、落胆の意を示しました。

 

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専門家たちはオオカバマダラの減少ついて、住宅が生息域に拡大し殺虫剤や除草剤の使用が増加したことで、彼らの餌や産卵場所となるトウワタが少なくなったことが主な原因だとしています。(オオカバマダラの幼虫はトウワタの葉を食べることで体内に毒をつくり、捕食者から食べられることを防ぎます)

またこの他にも、農薬の使用や気候変動による天候の変化なども理由に挙げました。

 

Image: USFWS Midwest Region/Flickr

 

アメリカ西部のオオカバマダラは毎年冬にカリフォルニアの南に向かい、3月ごろには再び北上し、北アメリカにまで行動範囲を広げます。

またロッキー山脈の東では、カナダ中央部とアメリカ東北部に生息しているオオカバマダラの個体群が、越冬のためにメキシコまで南下します。

オオカバマダラは毎年同じ場所に、また時には同じ木にさえ戻ってくるため、越冬場所の環境を守ることは、彼らの生存にとって非常に重要です。

Xerces Societyのサリナ・ジェプセン氏は、「オオカバマダラを救うために残りの越冬地を保護しなければならない」と述べたうえで、特にアメリカでは気候変動による激しい嵐が蝶を脅威にさらしており、これは州や政府にとって対処する必要のある緊急の問題であると指摘しました。

 

越冬先のメキシコの関係者は、2019年にやってきたオオカバマダラの数が例年と比べて回復したと発表しましたが、今年の数についてはまだ明らかにしていません。

 


 

ワシントン州立大学の研究者は、2017年に行った調査結果から、種の保存のために行動しなければオオカバマダラは今後数十年で絶滅すると予測しています。

オオカバマダラは現在、アメリカの「絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律」の中の保護対象に含まれるかどうかが検討されており、今年の12月には結果がわかる見通しです。

 

Xerces Societyのペルトン氏は、蝶を救うことは簡単なことではないと認めつつも、今年のオオカバマダラの数がわずがでも増えていたことには勇気づけられた、と語っています。

そして、オオカバマダラの移動ルート沿いに早咲きの花とトウワタを植えることで蝶の回復を支援できると話し、「行動するのに遅すぎることはない」と人々に呼びかけました。

現在Xerces Societyはカリフォルニア州と協力し、州立公園にオオカバマダラの新しい越冬場所を開発中です。

 


 

 

せつな
せつな

1994年から2016年の間に東部のオオカバマダラの数は80%以上も減少したらしい……

かなで
かなで

州立公園の新しい越冬地がオオカバマダラに気に入ってもらえるといいね

 

 

 

References: CBS News,The Guardian