コスタリカのオスティオナルの沿岸には、毎年産卵のために大量のヒメウミガメがやってきます。
大群で行われる産卵は「アリバダ」と呼ばれ、浜辺は無数の雌の亀と卵で埋め尽くされます。
数日から10日間ほど続くこの現象は、コスタリカとメキシコ、パナマなどごく一部の浜辺だけでしか確認されておらず、オスティオナルよりも多くの亀がやってくるのは、メキシコのオアハカにあるエスコビラビーチだけです。
アリバダは、ヒメウミガメが子孫を残す確率を上げるための行動だと考えられていますが、同じ場所で孵化する大量の子亀たちが鳥たちの餌になることも多く、その実態は謎に包まれています。
海一面に広がるヒメウミガメの大群
ある海洋学者が撮影したドローン映像が、アリバダの神秘について人々の興味をかきたてています。
その素晴らしく感動的な映像は、地球が守るべき生物であふれていることを私たちに思い起こさせます。
Thousands of Turtles Video – NosaraSustainability.org
アリバダを研究している海洋生物学者のヴァネッサ・ベジー氏は、ヒメウミガメの産卵時期とビーチが混雑する時期が重なり合っていることを危惧しています。
ヒメウミガメはIUCN(国際自然保護連合)の保全状況評価において“脆弱”と判断されており、生息数の低下が懸念される動物です。
ベジー氏は、ヒメウミガメの保全には人々の関心が不可欠だと思い立ち、アリバダという神秘的な現象をより多くの人に知ってもらおうと様々な活動を行ってきました。
2016年に研究の一環としてドローンを使ってビーチを上空から撮影したとき、ベジー氏はこの映像が、ヒメウミガメの保全とこの地域の保護に役立つかもしれないと考えました。
水面に浮かぶヒメウミガメ。水中にも。 (Vanessa Bezy/YouTube)
映像では、カメラが遠ざかるにつれヒメウミガメの姿がますます増えていき、海一帯に数えきれないほどの亀が存在しているのがわかります。
ドローンが捉えた映像には水面近くに浮かぶヒメウミガメが見られますが、それは表面的なもので、水中にも数えきれないほどの亀が泳いでいます。
動画のキャプションによると、この日撮影されたヒメウミガメの数は、サッカーコート1面に対して5,000匹の密度であり、それが1,000個分のサッカーコートに広がるほどの規模でした。
水中の亀の数を計ることができないため、実際にはもっと多くの亀が存在しているものと思われます。
ベジー氏は、ヒメウミガメが開発や違法な卵の乱獲などによって被害を受けていることに懸念を抱いており、その対策のために、2つのグループを立ち上げて保護活動に力を入れています。
「ウミガメ保護プロジェクト」と「野生生物保護協会」の2つのグループは、地域の住民や科学者なども参加し、ヒメウミガメの生態や巣の調査、そして多くの人にこの神秘的な亀のことを知らせる活動を行っています。
ベジー氏は「この映像を見た人はみな感情的に反応する」と話し、これがヒメウミガメの保全に良い影響を与えるものになることに期待を寄せています。
観光客や自然環境の破壊がヒメウミガメの産卵地に影響を及ぼしているのは確かです。
しかし一部の科学者は、亀の卵が孵る際の雌雄の決定が周囲の温度によって変わることに注目しています。
気候変動や温暖化により海水温度が上昇してしまうと、生まれる卵の性別が常に一定になってしまう可能性があります。
そのためウミガメの保護を本当の意味で達成するためには、住んでいる環境を守るだけでなく、世界中の人々が地球の温度の上昇を抑えることに意識を向ける必要があります。
ヒメウミガメの神秘的な産卵イベントがこれからも続いていくかどうかは、地球に住む一人一人の自然への関心にかかっています。
海面の点々全てがカメなのか……何匹いるんだろう……
ヒメウミガメの数は年々減っているみたいだから、いつまでも産卵できるようにこの場所を守っていかなきゃね
References:National Geographic