クジラと船の衝突を防ぐ画期的な試み ブイからのデータを元にした警報システム

動物
(Hari Nandakumar/Unsplash)

アイルランドの自然保護団体は、船とクジラの衝突事故を防ぐため、新たに「ブイ」型のデータ収集装置を開発しました。

クジラやイルカといった海洋哺乳類は、仲間との交信に独特の波長をもつ音を使います。

これは危険の回避など、群れの行動に大きな影響を与える重要なスキルです。

しかしこの交信は、船舶のスクリューや潜水艦のソナーといった人工的な音により妨害されることがあり、それが衝突事故を引き起こす原因の一つとなっています。

AI技術を取り入れた新たな装置は、船とクジラの衝突を防ぎ、人々の海洋生態系に対する理解を深めます。

 

スポンサーリンク

 

クジラの位置と動きを記録する特製のブイ

 

クジラの動きや位置を記録する特製のブイ (Credit: ORCA Ireland)

 

アイルランドの非営利団体「ORCA Ireland (Ocean Research&Conservation Association Ireland)」は、近海に生息しているクジラが放つ音を記録するため、「Smart Whale Sounds」と呼ばれるプロジェクトを始めました。

これは特殊なブイを海に浮かべ、クジラの出す音とその場所を記録するもので、蓄積されたデータは将来、クジラの出現を予測し船に知らせるシステムに使われます。

 

アイルランド近海は、ナガスクジラを含むクジラとイルカの種、そしてネズミイルカの主要な生息地であると同時に、年間数千隻の船舶が航行する騒音レベルの高い海域でもあります。

このような場所では、音により方向感覚を失った海洋生物と船との接触事故が起きます。

しかしこうした事故は、その全てが報告されるわけではなく、実際にどれだけのクジライルカが犠牲になっているかは不明です。

ORCA Irelandは、海洋生物を守るために、船舶側の行動を変えたいと考えています。

ORCA Irelandの創設者である海洋生態学者のエメル・キーブニー氏は、「アイルランドの海域で起こる衝突の頻度や船の大きさについてはほとんどわかっていません。重要なのは、クジラのいる海域を通過する船が、そこで何が起きているのかを理解できることです」と述べています。

 

 

ブイからのデータは、AI技術を使った機械学習を経て、最終的にはクジラの位置を船舶に知らせる「警報システム」へと発展します。

クジラとの衝突事故が絶えないアメリカでは、既に似たようなシステムが稼働しており、衝突の可能性が高い海域を通過する船は事前に情報を受け取っています。

今回の新しい試みについてキーブニー氏は、「音の検出とリアルタイム情報をアプリに統合し船員に通知すれば、船は速度を落とし衝突のリスクを減らすことができる」と述べています。

 

スポンサーリンク

 

ブイを使ったクジラの生息状況の把握は、海洋生態系に対する一般の人々の理解をより深める可能性があります。

地元でホエールウォッチングツアーの船長をしているキーラン・コリンズ氏は、「本当に重要なのは、これらの動物がそこにいるということを、人々が認識することだ」と述べ、ブイの設置は、「クジラと野生動物にとって良いニュースである」と付け加えています。

 

 

 


 

 

かなで
かなで

海の中がうるさいと仲間同士で情報がうまく伝わらなくなっちゃうんだよ

しぐれ
しぐれ

船だってクジラと衝突したくはないだろうし、早くシステムが使えるようになるといいね

 

Reference: Sky News