人類の90%以上が右利きです。
人間の脳は左右に分かれ非対称性があるため、右脳を使う人は左利き、左脳を使う人は右利きになりやすいとされています。
また右脳は感情を、左脳は言語や計算などを担当していることから、自分がどういった適正をもっているのかを利き手から判断しようとする人たちもいます。
しかし利き手があるのは人間だけではありません。
多くの動物には左右どちらかに行動が偏る傾向があり、それは海を泳ぐ生き物も同じです。
最新の調査によると、バンドウイルカのほとんどは「右利き」であり、その割合は、右利きが多い人類よりも高いことが明らかになっています。
バンドウイルカの99%が右利き
アメリカの非営利組織「Dolphin Communication Project」のデイジー・カプラン博士たちのグループは、バハマの海に生息している30頭弱のバンドウイルカを長年調査しています。
イルカは海底に潜む魚や甲殻類などの餌を探す際に、特徴的な行動をとることで知られています。
海底の砂地にヒレをこすりつけたり鼻先を突っ込んでぐるぐると回転する「クレーター・フィーディング(crater feeding)」と呼ばれるその行動は、観察者にとって、イルカが体のどちら側を優先しているのかを知る絶好の機会です。
カプラン博士たちは、バハマのイルカのクレーター・フィーディングを2012年から2018年の間に計709回観察し、彼らがどちら側に回転しているのかを記録していきました。
結果は、709回のうち705回においてイルカは“左”に回転していました。
これは周囲を見るために右目を使うことを表し、すなわちイルカが「右利き」であることを意味します。
カプラン博士は「そもそもクレーター・フィーディングの観察でこのような結果を見つけることは期待していなかった」と述べ、この発見が予期せぬ驚きだったと明かしました。
Image by Julia Schwab from Pixabay
イルカがなぜ右利きなのかについてははっきりとした理由はわかっていません。
博士は、イルカが餌を探すときに用いる反響定位(音波の反響によって獲物の位置や距離を特定する技術。エコーロケーションとも)や、餌に関する情報処理が、主に脳の左半球で行われることと関係があると考えています。
人間の脳は左脳と右脳とでそれぞれの役割が決められており、どちらをよく使うかによって利き手が変わってきます。
イルカの脳も人間と同じように、左右での役割分担と非対称性があり、左半球では主に採餌に関わる処理が行われています。
したがって、右目を使って餌を探そうとするのは理にかなった行動であると言えます。
またイルカの反響定位を司る器官は頭の右側に位置していることから、獲物を探す際に体の右側を使うのは、餌を得る確率を高めるための効率的な方法となります。
今回観察されたバハマのバンドウイルカの99%は右利きでした。
残りの1%、709回のうち4回だけ確認された左利きは、グループの中のある1頭だけが取った行動でした。
カプラン博士は、このイルカの右側のヒレの形が通常の形ではないことを発見し、確実ではないものの、このヒレの形の違いが行動の違いに影響を及ぼしたかもしれないと話しています。
博士は今後も、バンドウイルカの行動の違いと脳との関係性についてさらに探求したいと意欲を見せました。
動物にも利き手があるのはいくつかの例からも明らかです。
例えばゴリラやチンパンジーは人間と同様に右利きの傾向があり、カンガルーやオウムなどはサウスポーです。
またキリンは水場で水を飲む際に左足を右足よりも前に出し、トナカイの群れは反時計回りに動く傾向があります。
この他にも猫やライオンなどの四足歩行の動物から、コウモリやミツバチといった鳥類や虫に至るまで、多くの生物には左右どちらかに行動が偏る傾向があります。
しかしこれらの偏りがどうして存在するのかは、人間の脳も含めてよくわかっていないのが現状です。
バンドウイルカのように極端に偏った傾向を持つ動物は、人間の脳をより深く理解するためのヒントにつながる可能性があります。
人間だけじゃなくいろんな動物にも利き手があるんだね
イルカの左脳が餌に関する働きをしているなら、右利きが多いのも納得だね
References:The Guardian