米国ワシントン大学と米国地質調査所の科学者たちは、海鳥の一種であるウミガラスが、2015年から2016年の間に最大で100万羽死亡したと報告しています。
科学誌PLOS ONEに掲載された研究は、カリフォルニアからアラスカにかけての海岸地域で起きたウミガラスの大量死の原因を、暖かくなった海水温によるものだと結論づけました。
平均よりも3度から6度も高い海水温の海域は「ブロブ」と呼ばれ、近年世界のあらゆる海域で確認されています。
科学者たちは、2013年から始まった異常な熱波の影響を受けたエルニーニョがブロブを形成すると考えています。
最大で100万羽が餓死、海水温の上昇による餌不足のため
2016年に打ち上げられたウミガラスの死骸 Credit: COASST
ワシントン大学が2015年5月から2016年4月にかけて行った調査では、カリフォルニアからアラスカまでの海岸沿いで約62,000羽のウミガラスの死骸が発見されています。
熱波の影響によると見られる海洋生物の死骸は、ウミガラス以外にも、アシカやエトピリカ、アメリカウミスズメ、ヒゲクジラなどの種でも確認されました。
しかしウミガラスの死骸の数はそれらの種よりも群を抜いて多く、地元の科学者はその数を例年比で1,000倍以上と見積もっています。
専門家は、海岸に打ち上げられる死骸が全体の一部であることを指摘し、ウミガラスの死亡数が最大で100万羽に達する可能性があると述べています。
米国地質研究所の生物学者であるジョン・ピアット教授は、「これだけの規模の死骸の発見は前例がない」と述べ、これは海洋の温暖化が生態系に甚大な影響を与えていることの証拠であると警告しました。
ウミガラスが大量に死んだのは、熱波の熱にやられたからではありません。
研究者は熱波が起きていた期間中の漁業データから、ウミガラスの大量死が起こったのは、暖められた海域に生息しているサケやスケトウダラ、オヒョウといった魚が、ウミガラスの餌となる小魚を食べつくしたことが原因であるとしています。
これらの捕食性の魚は、水温の上昇に伴って活発になり、普段よりも多くの魚を食べるようになります。
ピアット教授は、「タラやオヒョウ、メルルーサなどが捕食する魚の量は、ブロブで観察される温暖化のレベルに応じて劇的に増加すると予測される」と話し、それは同じ餌を求めるウミガラスのような海鳥の大量死につながると指摘しています。
ワシントン大学の研究チームは、海岸で発見されたウミガラスのほとんどが繁殖年齢に達した大人の個体であったことから、ウミガラスの繁殖コロニーの調査も行っています。
エルニーニョの影響が最も激しかった2015年は、3つのコロニーで雛が1羽も確認されず、翌年の調査では、雛の生まれなかったコロニーの数は12に増加していました。
チームが調査することのできたコロニーの数は全体の4分の1でしかなかったため、ウミガラス全体での被害はさらに拡大しているおそれがあります。
研究者はウミガラスの個体回復の見込みについて、「予測される地球温暖化の傾向とそれに伴う頻繁な熱波の可能性を考えると、ウミガラスの個体数が回復するのにどれだけの時間がかかるかはまったくわからない」と述べています。
2018年に行われた調査によると、世界の海面で起きた熱波の数は、1982年から2016年までの間で82%も増加しています。
通常よりも暖かい海域であるブロブは、台風やハリケーンを強力にするだけでなく、そこに住む海洋生物の生態をも変化させます。
2019年9月にはワシントン州の沖合でブロブが発見されており、今回の研究を行った科学者たちは、ウミガラスを含む生き物がさらなる被害を受けることを憂慮しています。
ウミガラスが死んじゃったのは餌自体がなくなったからじゃなくて、他の魚に餌を食べられちゃったからなんだね
海水温の上昇は間接的にいろんな生き物に影響を与えてしまう……
References: CNN,University of Washington