ハワイ大学マノア校の海洋生物学者たちがアラスカの海で計画的に餌をとるザトウクジラの映像を撮影しています。
ザトウクジラは夏にアラスカでたくさんの餌を食べた後、繁殖のためにハワイ周辺の海域に戻りそこで子育てをします。
子育て中のザトウクジラは食事をしないため、繁殖期間の前にできるだけ多くのエネルギーを摂取する必要があります。
海洋学者たちはザトウクジラに装着したカメラと海面の上空からのドローンによって彼らの驚きの捕食行動を捉えることに成功しました。
Whale bubble-net feeding documented by UH researchers through groundbreaking video
ザトウクジラは餌を得るために水中に幾層もの「泡の網(バブルネット)」を作り、その中にオキアミや小魚などを追い込みます。
そして別のザトウクジラがその泡でできた筒状のトンネルを通り大量の餌を摂取します。
水中をぐるぐる回りながら泡を出しトンネルを作っていく Image:University of Hawai
「バブルネット・フィーディング」とも呼ばれるこの捕食行動について、今回の研究に参加した海洋哺乳類研究プログラムの海洋学者、ラース・ベイダー氏は、ドローンによる上空からの映像と水中映像との2つのデータセットを重ね合わせることができたのは非常にエキサイティングだと語ります。
映像は画期的です。ザトウクジラがどのように獲物を操作し捕獲する準備を行っているのかを明らかにしています。
ザトウクジラは1985年から商業捕鯨が禁止されて以降生息数が増加していて、現時点では危険にさらされているとは考えられていません。
しかしここ5年ほどで目撃数が大幅に減少しているという報告もあり、種の保全を進めるためにはザトウクジラの生態についてのさらなる理解が必要な状況です。
ベイダー氏は上空と水中からの2つの画期的な映像が得られたことは、ザトウクジラについての新たな洞察につながるだろうと話しました。
水中に泡のネットを作り餌を捕獲する方法は、ニタリクジラやフロリダ沖に住むバンドウイルカなどの動物にも見られます。
アラスカ沖で観察されたザトウクジラの捕食行動は、ザトウクジラ全体が保有する技術ではないと考えられています。
研究者たちは一定範囲のグループが特殊な狩りの方法を共有していると推測しています。
映像のザトウクジラはそれぞれが自分の役目について十分理解しているように見受けられることから、協力すれば最大限のエネルギーを得られることをグループ全体が熟知していることが想像できます。
今回の研究は海洋生物の個体群の変化や生息地への人為的な影響の度合いなどを調べるために行われています。
気候変動などによって海洋生物の住む環境も年々変化してきています。
ザトウクジラのユニークな狩猟方法は、彼らが生存するために生み出した適応と言えるのかもしれません。
トンネルを作って餌を閉じ込めるザトウクジラさんスゴイ!
ザトウクジラは歌を歌うそうだぞ。きっと狩りの方法も共有してるんだな
References:University of Hawai,ScienceAlert