2019年後半から発生したオーストラリアの大規模火災は各地で猛威を振るい、コアラをはじめとした多くの固有種の命を奪いました。
オーストラリアの南に浮かぶ島「カンガルー島」でも、火災によって動物の生息地が消失し、ここにしかいない希少な種の生存が脅かされています。
「ダンナート (Kangaroo Island dunnart)」と呼ばれるフクロネコ科の動物も被害を受けた種の一つです。
ダンナートは火災が起こる前から絶滅が危惧されていた動物で、その数は現時点で50匹に満たないと推定されています。
現在カンガルー島では、失われた固有種の生息地を回復するため、懸命な保全活動が行われています。
希少な有袋類、カンガルー島のダンナート
カンガルー島のダンナート (Credit: Natural Resources Kangaroo Island)
地元の野生生物保護団体である「ランド・フォー・ワイルドライフ (Kangaroo Island Land for Wildlife-KI LfW)」のスタッフたちは、ダンナートを保護するために、火災の被害を受けなかったわずかな土地にリモートカメラを仕掛けています。
またその他にも、小さな動物だけが通ることのできるトンネルを敷設したり、天敵である野良猫を捕獲するワナなどを仕掛けたりして、24時間体制でダンナートの保護に努めています。
ダンナートは1990年以降島の西端でしか目撃されていませんが、今回の火災はまさにその島の西側で発生しました。
生息地はこの火災によって90%以上が消失しており、生態学者の多くはダンナートの生存は危機的状況にあると考えています。
連邦政府はカンガルー島のダンナートを、2月11日付けで、山火事の脅威にさらされている動物種のリストのトップに指定しています。
リモートカメラで撮影されたダンナート
リモートカメラが撮影したダンナート (Image: Kangaroo Island Land for Wildlife)
絶望的と思われていたダンナートの生存ですが、最近になってリモートカメラがその姿をとらえ、保護活動に携わっている人たちの希望となっています。
ダンナートは、島の北西部にある222ヘクタールの私有地で確認されました。
この私有地は島の数少ない火災の被害を受けなかった場所であり、このような土地は島の中で10か所しかありません。
KI LfWの生態学者であるハイディ・グロフェン(Heidi Groffen)氏は、火災の被害を受けていない土地は種の将来にとって非常に重要であると説明し、ダンナートの姿を見たときは「嬉しくて飛び跳ねた」と語りました。
そして、「これらの画像は、ダンナートの個体群がこの土地に支えられていることを証明している」と述べ、この重要な生息地が火災から守られたのは、農場と消防士の功績であると付け加えました。
リモートカメラの設置に資金を提供した、WWFオーストラリアのダレン・グローバー(Darren Grover)氏は、ダンナートは助けがなければ生き残れないと話します。
グローバー氏は、「ダンナートは火災以前から危機的な状況にあり、火災後の数は50匹にまで減少しているかもしれない」と述べたうえで、「重要なことは、生き残っているダンナートと、生息地に対する脅威を監視することだ」と強調しました。
カンガルー島の固有種を脅かす野良猫の存在
わずか25グラムの体重しかないダンナートの一番の脅威は野良猫です。
猫は巧みに火災を生き延びており、ある場所に仕掛けたトラップは30匹以上の野良猫を捕獲しています。
グロフェン氏は、猫は燃えていない場所を探して移動していると説明し、野良猫を駆除しなければ、ダンナートの個体群全てがたった一匹によって一掃される可能性があると指摘しています。
現在生態学者は、安楽死させた野良猫の胃の内容物を記録し、固有種に与える影響について分析を行っています。
また猫以外にも、ゴアナと呼ばれる大きなトカゲも脅威であるため、ダンナートのような小さな生き物だけが通れるトンネルを各地に設置しています。
KI LfWは今後ダンナートにタグを付け、より徹底した管理を行いたいとしています。
カンガルー島のダンナートは数が少なくて、これまでもほとんど目撃されたことがないんだって
島の面積の半分が火災の被害を受けたそうだから、生き残った動物はこれからが大変だね
References: The Guardian,Good Living