飛べない鳥であるペンギンについて考えるとき、ほとんどの人は真っ白な南極大陸を思い浮かべます。
しかし彼らは最初からそこにいたわけではありません。
世界各地の動物園や大学などの科学者によって行われた新しい研究は、18のペンギンの種のゲノム解析から、それらのルーツが南極ではなく、オーストラリアとニュージーランドにあることを突き止めています。
ペンギンは環境の変化にあわせて故郷を離れ、南極をはじめとした各地に散らばっていきました。
ペンギンの故郷はオーストラリアとニュージーランド
米国科学アカデミー紀要に掲載されたペンギンのルーツを探る研究は、18のペンギンの種の22のゲノムを使って、彼らがいつ頃またどのようにして生息範囲を広げていったのかを調査しています。
現存しているペンギンがどこからやってきたのかについては議論があり、多くの科学者は南極大陸を第一の候補と考えています。
しかしゲノム解析は、ペンギンが最初から寒い地域に適応していたわけではなく、温帯地域から徐々に広がっていったことを示しました。
ペンギンは2200万年前の中新世にオーストラリアとニュージーランドに出現した後、地球の環境が変化するのにあわせ、より寒いあるいは暖かい地域へと生息地を広げていきました。
研究では、18のペンギンの種の全てが共通の祖先から派生した「クラウングループ」であることや、どこに属するのかが明白でなかったオウサマペンギン属が、これらの姉妹群であることなどが明らかになっています。
オウサマペンギン (Michal Mrozek/Unsplash)
ペンギンの多様化は、気候の変化と1200万年前におきた「ドレーク海峡」の開通によって促進されました。
南極の周囲には「南極環流」と呼ばれる西から東への流れがあります。
これは地球の自転によって起こる時計回りの海流で、現在はドレーク海峡を通って南極大陸を一周しています。
しかし1200万年前は陸続きであったため、流れはせき止められていました。
ドレーク海峡の開通は、オーストラリアとニュージーランドに生息していたペンギンたちに、南極海やインド洋に進出する機会をもたらしました。
気候変動はペンギンにとって脅威
現在ペンギンは、南極だけでなく、南アメリカや南アフリカ、インド洋の島々、亜熱帯地域など広範囲に生息しています。
これらの地域にはかなりの温度差がありますが、ペンギンは柔軟に適応しています。
研究では、ペンギンの遺伝子が過酷な環境にあわせて進化してきたことが確認されています。
あるペンギンの種は氷点下の南極の温度に適応し、別のペンギンは赤道付近の熱帯の温度に適応しました。
また深い潜水を可能にするために、酸素の消費を抑える進化を遂げたものもいました。
ペンギンはこれらの適応を、何百万年もの時間をかけて行いました。
しかし現在の気候変動は、ペンギンたちにそれほど猶予を与えてはいません。
近年急速に進みつつある温暖化は、南極大陸の海氷を解かし、コウテイペンギンの繁殖コロニーを奪っています。
最も個体数の多いヒゲペンギンは、ここ50年でほぼ半分にまで数を減らしました。
また極端な気象イベントの発生により海水温が上昇し、ガラパゴスペンギンやケープペンギンなどの数が減ってきています。
研究者の一人でカリフォルニア大学バークレー校のジュリアナ・ヴィアナ氏は、「現在の気候と環境の変化は速すぎて、一部の種は適応できない」と指摘しています。
研究チームは300のペンギンのゲノムを把握しており、現在も個体や群れの間にある遺伝的特徴を探しています。
最近の研究では、新しいペンギンの系統も見つかりました。
ヴィアナ氏は、「ペンギンは非常にカリスマ的な存在であり、この研究が彼らの保全につながることを願っている」と話しています。

ペンギンは寒いところにも暖かいところにも適応してきたんだね

空を飛ぶように進化しなかったのはなぜなんだろう……
References: UC Berkeley