犬は他の動物よりも人間の言葉を聞き分ける能力に長けています。
命令を忠実に実行できる犬は家庭内で愛される地位につき、よく訓練された犬は、様々な分野で人間の片腕として活躍しています。
しかし犬が言葉をどれだけ正確に理解し、また区別しているのかはよくわかっていません。
ハンガリーの研究者は、犬が人間の言葉にどう反応しているのかを調べる実験を行っています。
犬は、似たような発音の単語を区別することができません。
犬は発音の似た単語を同じものとして扱っている
ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の研究チームは、人間の言葉を聞き分ける犬の能力を理解するため、非侵襲的な手法を使って脳波を測定しています。
実験には40匹以上の訓練されていない犬が参加しました。
脳波を調べる電極をつけられた犬は、スピーカーから流れてくる3種類の単語を聞きました。
1つ目の単語は「お座り (sit)」などの指示語で、2つ目は、発音が似ているが意味のない単語(例えばsut)、3つ目は、発音が異なり意味もないナンセンスな単語(例えばbep)でした。
研究者はこれらの単語をランダムに80回犬に聞かせ、脳波の変化を調べました。
体に傷をつけない方法で電極をつけた犬 (Credit: Vivien Reicher)
実験の結果、犬は発音の似た単語を区別していないことがわかりました。
犬の脳波は、「sit」と「sut」という単語を聞いたとき同じ動きを見せました。
一方でナンセンスな単語に対する脳波のパターンは、上の2つとは明らかに異なりました。
これは犬の言葉の認識が、個々の単語の違いではなく、飼い主やトレーナーの発音を元に行われていることを示唆しています。
研究を主導したエトヴェシュ・ロラーンド大学のリラ・マギャリ氏は、「犬の脳の活動は、知っている指示語を聞くときと、それとはまったく異なる単語を聞くときとでは違いがある」と述べています。
実験に参加した犬は、聞きなれている家族や飼い主からの声を、それ以外の声と区別することができました。
しかし単語自体を分けて認識するのは難しく、発音が似ている場合、脳は似たような反応を示しました。
マギャリ氏は、「犬は意味のない言葉を区別することはできるが、発音についてはあまり注意を払っていないかもしれない」と指摘し、一般的な犬の記憶容量について、「一生のうちで、ほんの少しの指示語しか学ぶことはできない」と述べています。
言葉を聞き分ける犬の能力については、さらなる研究が必要です。
実験に参加した犬は少数であり、信頼できるデータとして採用されたのは17匹だけでした。
研究者は、犬が認識できる単語の量が限られている理由について、「いまだ不明である」と述べています。
研究結果はRoyal Society Open Scienceに掲載されました。
犬は人間の言葉を発音で記憶してるんだね
聞きなれない言葉をちゃんと区別してるのはすごい……
References: CNN,EurekAlert