オーストラリアの研究者は、現存する唯一の空飛ぶ有袋類である「グレーターグライダー」の遺伝子分析を行った結果、この種が実際には3種であることを発見しています。
「グレーターグライダー (Greater glider)」は、オーストラリアの東海岸沿いに生息する夜行性の有袋類で、コアラ同様ユーカリの葉を専門的に食べる草食動物です。
ふさふさの毛と長い尾が特徴で、一生のほとんどを樹上で過ごし、木から木へ、時には100メートル以上も滑空します。
現在グレーターグライダーはIUCNのレッドリストにおいて、絶滅のおそれがある「危急種」に分類されています。
2019年と2020年に発生した山火事により、グレーターグライダーを含む多くのオーストラリアの固有種は存続の危機に立たされています。
空飛ぶ有袋類グレーターグライダーは1種ではなく3種
ジェームズクック大学やオーストラリア国立大学などの生物学者チームは、グレーターグライダーの遺伝子情報を調べるため、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州の各地の生息地と、博物館の標本から多数の組織サンプルを入手しました。
グレーターグライダーは東海岸沿いの南北に広く分布しており、生息している場所によって大きさや色が少しずつ異なります。
これはこの種が1種ではない可能性を示唆するものですが、これまでにはっきりとした証拠がなく、分類については専門家の間でも意見が分かれていました。
研究チームは組織サンプルを比較し、見た目の違いが遺伝子によるものなのかを検証しました。
その結果、グレーターグライダーには3つの種があることが明らかになりました。
体の大きさや毛色の違いは系統が異なるためで、個体差ではありませんでした。
新しく特定されたグレーターグライダー。 左上がP. minor、左下と右がP.armillatus (Credit: Denise McGregor)
遺伝子の特定によりグレーターグライダーは、これまでに知られてきた「Petauroides volans」の他に、新たに「Petauroides minor」と「Petauroides armillatus」が加わり、合計3種となりました。
研究チームの一人であるジェームズクック大学のアンドリュー・クロッケンバーガー氏は、「サイズと生理機能の違いから、グレーターグライダーが1種ではなく実際には3種であることがわかった」と述べ、「これによりオーストラリアの生物多様性はさらに豊かになった」と付け加えています。
グレーターグライダーは、かつてはよく見られる有袋類でした。
しかし他のオーストラリアの固有種と同様、気候変動や最近の山火事の影響により急激に数を減らしています。
調査では、南北に満遍なく広がっていた生息地が山火事で分断され、一部のグループが孤立状態に陥っていることが確認されました。
グレーターグライダーを3つに分類した今回の研究は、種を保全する方法について考え直すきっかけとなる可能性があります。
Scientific Reportsに掲載された研究の著者の一人で、オーストラリア国立大学の生物学者であるカラ・ヤンゲントブ氏は、「グレーターグライダーが以前に認識されていたよりもはるかに狭い範囲に分布しているという知識は、将来の保全と管理において考慮されるべきである」と述べています。
グレーターグライダーは木のうろに巣を作るんだって
生息地がなくならないように森林を守っていかなくちゃね
Reference: James Cook University