複数の海外メディアによると、オーストラリアの南東部に位置する港湾都市ウロンゴンで76歳の男性が鳥の襲撃に遭い命を落としました。
男性はウロンゴンにあるニコルソン公園でサイクリングを楽しんでいたところ突然鳥の急降下攻撃を受け、それを避ける際にフェンスの支柱にぶつかり身体が地面に投げ出されました。
その後男性はシドニーの病院に空輸されましたがまもなく死亡したということです。
男性を襲った鳥は「Magpie(マグパイ)」――日本名「カササギフエガラス」――という鳥で、春(南半球はこれから春)の繁殖シーズンになると攻撃的になることで知られています。
マグパイは空から一直線に歩行者や自転車に乗っている人を襲うことから、“急降下マグパイ”という異名を持っています。
サイクリング中を狙う“急降下マグパイ”
マグパイの急降下攻撃は例年9月と10月頃に発生します。
彼らは8月に繁殖を開始し、シーズン中は縄張りを通る人間に対し非常に攻撃的になります。
マグパイの襲撃を記録しその危険性と対策について啓蒙している「Magpie Alert!」によると、今年に入って既に(9月16日時点)1,763件の襲撃事件があり、そのうちの212件は怪我などの被害が発生しています。(2018年は3,000を超える襲撃がありました)
マグパイの襲撃マップ。赤は実際に怪我などの被害があった地域。 Image Credit:Magpie Alert!
マグパイの襲撃はそのほとんどがオーストラリアの東海岸沿いで発生し、致命的なケースは少ないものの多くの人がサイクリング中に恐怖を味わっています。
マグパイは明らかに人間にとって害を及ぼす鳥といえますが、この鳥は法律によって保護されているため住民は強気な行動に出ることができません。
マグパイを殺したり卵やひよこを奪ったりするのは法律で禁止されています。
しかし今月の初め、長年にわたりマグパイの被害を受けていたヒルズシャイアの住民がマグパイを射殺した際には各地で大きな反響が巻き起こりました。
このケースでは何人もの住民がマグパイによって病院送りにされていたことから、当局はマグパイを殺したことに関して罪に問わない決定をしました。
今回男性がマグパイの襲撃をきっかけに亡くなったことで、この攻撃的な鳥に対する保護の是非や対処の仕方などについて議論がなされるのは確実です。
(※マグパイは法律で保護されてはいますが、重大なケースの場合は地方自治体の裁量で処理することが可能だということです)
下の動画はマグパイがサイクリング中の人を襲っているものです。かなり攻撃的でヘルメットを被っていてもその衝撃が大きいだろうことが伝わってきます。
Amber and Billo’s – Amber vs the Magpie – The Eyes Don’t Work
Magpie Alert!によると、襲撃の約70%はサイクリング中に発生し約22%が歩行中の被害です。
この数字から“自転車と人間”という組み合わせが(どういうわけか)マグパイの怒りを買っているのは確かなようです。
マグパイの習性の理解が進めばこうした襲撃を避ける方法が見つかる可能性もあります。
しかし当面の間は彼らを刺激せずゆっくりとその場を離れるのが最も被害に遭わない方法です。
この地域の人たちはマグパイの襲撃シーズンに合わせて、外出時に長い棒を上方に振りかざしたり、突起物のついたヘルメットを被ってサイクリングしたりします。
もし観光に訪れた際に奇妙な行動をしている人たちに遭遇しても通報するのはやめておきましょう。
※マグパイの日本名は「カササギフエガラス」で、日本にいるカササギと外見もよく似ていますが別の種であり関連性はありません。