ノースカロライナを襲った寒波の影響は人間だけでなく動物たちにとっても過酷な体験となりました。
ましてや元々熱帯地域に住んでいた動物たちにとっては経験がないほどの寒さです。
しかし動物の適応力はどんなときでも生き残る術を見つけ出すものです。
オーシャンアイルビーチのShallotte River Swamp Parkという自然公園で飼われているワニ(アリゲーター)も絶妙なサバイバル能力を発揮し、寒さを乗り切ることに成功しています。
ワニのサバイバルスキルは生き残るための本能
Credit:George Howard/The Swamp Park
この氷の下で死んだように目を閉じているワニを発見したSwamp ParkのGeorge Howardさんは、最初木の切り株だと思いました。
しかしよく見ると白い歯が見えているのに気づき、それがワニの口先だと理解するとさらに慌てることになります。
18匹のワニを飼育するSwamp Parkの管理者である彼は、これまでそのような状態のワニを見たことがありませんでした。
ワニを救うべくシャベルを持ち氷を掻きだそうとしますが、まずはその前に現代人にとっておなじみの方法をとることにしました――グーグル検索です。
検索結果はすぐに、凍った池の中で鼻だけを出して呼吸しているワニの例を見つけました。
Howardさんはホッとすると同時に驚きの感情を抱きました。
これは私が見たことのなかで一番クレイジーなことだった。最初は心配していたけど、それが彼らが呼吸する唯一の方法だと気づくと驚きに変わったんだ。
実はこの出来事が起こったのは昨年の1月のことでした。
Howardさんはあのような出来事は二度とないと思っていましたが、先週ノースカロライナを再び寒波が襲い、彼の管理する池を含む65エーカーの公園内の水が凍結してしまいました。
池では去年と同じような光景が広がっていました。
Howardさんは今度はグーグルを頼るのをやめて動画をFacebookに投稿しました。
それは――1年前のHowardさんと同じように――多くの人に驚きの感情をもたらしました。
口と鼻だけを水面に突き出したワニは、誰が見ても死んでいるように見えますがHowardさんはこれをワニたちが身につけたサバイバル技術だとみています。
池の水は氷点下になるこの時期には凍結することがあると言います。
彼らは意識があることを除けばいわゆる冬眠状態に入っています。寒さを乗り切るために代謝を下げ、気温があがるまでは数か月の間食事をしません。
Swamp Parkでの冬眠は幸運なことに短期間で終わりました。
氷が解けた後、ワニたちは何事もなかったように日光浴を始めたそうです。
ワニの持つ驚異の適応力
Credit:George Howard/The Swamp Park
今では世界各地の動物園や自然公園でワニが飼育されています。
しかし元々暑い地域に住むワニにとって凍った池の存在は未知のものでした。
ワニが環境の変化にどのように反応するのかを研究しているノースフロリダ大学の生物学教授Adam E. Rosenblatt氏は、今回のようなワニの行動は本能的な適応ではないかと語ります。
彼らがどうしてそのやり方を覚えたのかは私には分かりません。しかし寒さの中を生き残れれば、彼らは繁殖することができます。
Rosenblatt教授によれば、70年代後半から80年代初めにかけてワニの行動を詳細に研究する動きが起きています。
その中には今回の事例のような、寒さの中で冬眠するワニの研究も存在していました。
1982年にはサウスカロライナ州で氷から鼻を突きだすワニの群れがいましたが、彼らは結局寒さのために数日後に死亡しました。
1983年には別の研究者が、凍った水中でのワニの姿勢について詳細に書き残しています。
Rosenblatt教授はワニの適応力は驚きに満ちていると語ります。
彼らはこのとき新陳代謝を止めています。エネルギーを消費しないのでもはや食べる必要はありません。心拍数や消化器系を遅くさせ、ただその場で暖かくなるのを待つのです。
ワニたちの行動が生き残って子孫をつなげていくための本能的行動なのだとしたら、それはまさに自然の持つ神秘の力といえます。
初めて体験する寒波にバッチリ適応するワニ――彼らはその見た目以外でも私たちに驚きを与えてくれる動物のようです。
References:LiveScience,ScienceAlert