南極の「ヒゲペンギン」の数が半世紀で半分以下に、温暖化が生態系に与える影響

動物
(Image: Paul Balfe/Flickr)

最も個体数の多いペンギンとして知られる「ヒゲペンギン」の数は、1971年に比べてほぼ半分になっています。

2012年に行われた調査では、ヒゲペンギンの数が2003年から2010年までと比べて39%減少したことが報告されていました。

今回、米国ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校とグリーンピースが共同で行った調査は、南極大陸周辺の海洋生態系が、近年の温暖化によって脅かされている実情を明らかにしています。

 

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南極の温暖化はヒゲペンギンの餌であるオキアミに影響を与える

 

グリーンピースの遠征に同行したストーニーブルック大学の4人の科学者は、南極海にあるサウス・シェトランド諸島でヒゲペンギンの繁殖ペアの数を計測し、エレファント島のペアの数が、1971年に比べて58%減となる52,786組であると報告しました。

他の島で行われた計測結果はまだ整理されていないものの、科学者たちはヒゲペンギンの減少傾向は明確で不穏なものであるとしています。

 

科学者はヒゲペンギンの減少は温暖化によるものだと考えています。

南極大陸と周囲の島の冬の気温は、産業革命以前の水準に比べて5度上昇しており、最近では、最高記録であった17.5度を超える18.3度の最高気温が計測されました。

この温暖化は、ヒゲペンギンの餌となるオキアミ(ナンキョクオキアミ)の数を減らします。

オキアミは海氷についた植物プランクトンを食べて成長するため、気温の上昇で氷が解けたり流れ出したりした場合、オキアミを主食とするこの地域の生き物は食料不足に陥ります。

コロニーの調査では、ヒゲペンギンの繁殖の成功率が以前と変わっていないことが明らかになっています。

これは、ひなたちが十分な餌を得られないことが、ヒゲペンギンの減少の原因であることを示す証拠です。

遠征に同行したストーニーブルック大学のヘザー・リンチ(Heather Lynch)博士は、「別の要因があるかもしれないが、私たちが持っている全ての証拠は、ヒゲペンギンの減少の原因が気候変動にあることを示唆している」と述べています。

 

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南極の温暖化による勝者と敗者

 

喉にあるヒゲのような模様が特徴のヒゲペンギン (Image: PAL LTER/Flickr)

 

ヒゲペンギンの減少に反して、別のペンギンの一種である「ジェンツーペンギン」の数は増加傾向にあります。

オキアミに依存するヒゲペンギンとは違い、ジェンツーペンギンは魚やイカなどを好むのがその理由です。

比較的環境変化の影響を受けにくいジェンツーペンギンは、いなくなったヒゲペンギンのコロニーに進出し始めています。

 

しかし気候変動は、ジェンツーペンギンのような勝者以上に多くの敗者を生んでいます。

2018年の研究では、キングペンギン(オウサマペンギン)の70%が今世紀末に絶滅、あるいは繁殖地の移動を余儀なくされるとしており、別の研究は、気候変動が進んだ場合、アデリーペンギンの生息地が60%失われる可能性があると警告しています。

またオキアミは海洋生態系を支えるキーストーン種でもあるため、海氷の溶解や流出は、これらに依存しているクジラやヒョウアザラシなどの種にも打撃を与える可能性があります。

グリーンピースは「ヒゲペンギンの減少を示した今回の調査結果は、世界で最もへんぴな場所における、より強力な気候変動対策と野生生物保護の必要性を浮き彫りにしている」と述べています。

 

 

 

 


 

 

しぐれ
しぐれ

ヒゲペンギンを保護の必要な種に分類するよう求める意見もあるんだって

せつな
せつな

温暖化の影響を真っ先に受けるのは南極や北極に住む動物たち……

 

 

 

References: The Guardian