2100年には半分の数に、南極のコウテイペンギンを脅かす温暖化の影響

動物
photo by Christopher Michel on Flickr

南極大陸に生息するコウテイペンギンは現在、IUCN(国際自然保護連合)が定めるレッドリストで、絶滅が危惧される種のうちの「近危急種(Near threatened)」に定められています。

近危急種はすぐに絶滅する危険はないものの、環境の変化によって次の段階である「危急種(Vulnerable species)」に移行する可能性が高いものを指します。

コウテイペンギンは、南極大陸の端にできる「定着氷(ていちゃくひょう-fast ice)」と呼ばれる平らな氷の層で子育てをします。

しかし最近の気候変化によって定着氷が速く解けてしまい、子育てがうまくいかなくなる事態が起き始めています。

コウテイペンギンの生態や生活環境について調査をしている生物学者は、現在の気候がこのまま続き温暖化が南極に及べば、2100年にはコウテイペンギンの数が半分になると予想しています。

現在南極のコウテイペンギンの数は約250,000匹とされています。

 

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コウテイペンギンの生活を支える「定着氷」の減少

 

photo by Christopher Michel on Flickr

 

ニュージーランドのカンタベリー大学で、コウテイペンギンの置かれた状況について調査をしているミシェル・ラルー博士は、コウテイペンギンには強い回復力があると述べ、現時点では絶滅の恐れがないと説明します。

しかし博士は、気候モデルが予測するような温暖化がこのままのペースで続けば、その回復力もコウテイペンギンの助けとはならないと嘆きます。

 

コウテイペンギンは、南極大陸の端に毎年作られる「定着氷」の上で繁殖や子育てをします。

定着氷は低くて平らであり、ペンギンたちが卵を暖め、また孵った雛を育てるのに理想的な環境です。

通常雛たちが一人前に泳げるようになるには8カ月から9カ月を要します。

しかしもし定着氷が予定よりも速く解けてしまうならば、雛たちは防水機能を持つ羽毛の成長を待たずに冷たい海に放り出されることになります。

また定着氷は大人のペンギンにとっても大きな意味を持ちます。

コウテイペンギンは1月と2月の間に脱皮をし、泳ぎに適した羽毛を身につけるようになりますが、この時に安定した氷がなければ、子供たちと同じく海に投げ出され溺れる危険性があります。

コウテイペンギンにとって定着氷はまさに命を支える土台です。

 

ラルー博士はコウテイペンギンのことを、その繁殖力や回復力の強さから“戦士”であると表現する一方、その強さが未来まで続くかどうかはわからない、と心配しています。

ここ数十年の観測から南極の氷は比較的安定した状態にあります。

しかし気候モデルは、仮にパリ協定で定められた「産業革命以前の平均気温から2℃までの上昇」を達成できたとしても、コウテイペンギンの数が劇的に減少すると予測しています。

地球の温度の上昇は、コウテイペンギンの生活基盤である定着氷を解かし、彼らの居場所を内陸へと押しやります。

予測は、コウテイペンギンの数を50%以上減らすと警告しています。

 

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コウテイペンギンを守るための行動と実現の難しさ

 

Image by Alan Faz from Pixabay

 

温暖化が南極にもたらしかねない影響については、多くの専門家が具体的なアクションを起こすよう促しています。

英国南極観測局の保全生物学部長である、フィル・トラサン博士は、南極の温暖化による影響を抑えるためには、温室効果ガスの排出量を“劇的”に削減するしか方法がないと話します。

しかしペンギンを守るための方法は一つだけではなく、様々なツールを利用できるとも述べます

 

ペンギンが生息する地域での漁業やその他の人間の活動を規制することができます。またコウテイペンギンを南極の特別保護種に指定する方法もあります。

 

トラサン博士は、現在南極にある「海洋保護区(MPA)」を拡大させることは、コウテイペンギンを守るためにできることの一つだとし、またMPA以外にもアクションプランを作成することはできると語りました。

 

現在WWF(世界自然保護基金)の資金提供により、イギリスとアメリカの科学者たちが10年にわたるコウテイペンギンの分析をしています。

彼らの集めたデータは、「近危急種」であるコウテイペンギンが、その上のレベルである「危急種」に移行するべきがどうかの判断材料に使われます。

IUCNのコウテイペンギンの保全評価は来年新たに更新されることになっています。

 


 

衛星を使って宇宙からペンギンの数を数える技術の先駆者である、英国南極観測局のピーター・フレットウェル博士は、「自分たちが知っている全てのことや、全ての専門家や全ての気候モデルが示すことは、コウテイペンギンが本当に困難な状態にあることを教えてくれている」と述べます。

博士はコウテイペンギンを救うためにあらゆる手段を尽くさなければならないと述べる一方、彼らの苦境の原因が気候の変化にあるということは、その解決が難しいものになることを意味しているとも指摘しました。

 

世界中が気候変動による影響について考え始めています。

コウテイペンギンを近い将来絶滅種にしないためには、地球に住む全ての人が、自然や動物、そして気候についてもっと関心を持つ必要があります。

 


 

 

せつな
せつな

気候モデルはあやしいという意見も聞くし、温暖化を止めることはそもそも不可能という話も聞く……

かなで
かなで

どっちにしてもコウテイペンギンがいなくなるのは嫌だよー!

しぐれ
しぐれ

地球やそこに住む生き物にもっとみんなが関心を持つようになってほしいね

 

 

References: BBC