南アジアに生息する「パラダイストビヘビ (Chrysopelea paradisi)」は木の上から“滑空”することで知られています。
このヘビは木を飛び降りるのと同時に体をくねらせ、ときには数十メートルも先の地面に着地します。
研究者はパラダイストビヘビが、なぜ滑空中に地上での移動と同じような動きをするのかについて、長年疑問に思ってきました。
米国バージニア工科大学のヘビの専門家はこの謎に取り組み、ようやく一つの答えを導き出しました。
パラダイストビヘビは飛距離を延ばし、そして安全に着陸するために、空中で必死に体をくねらせています。
滑空中の動きによって飛距離を延ばし体を水平に保つ
20年以上にわたってパラダイストビヘビを研究してきたバージニア工科大学の生物学者ジェイク・ソチャ氏の研究チームは、大学内にある芸術や研究のための施設モス・アーツセンターの中に自然に似せた環境を作り、カメラやモーションキャプチャーを使ってヘビの動きを詳細に記録しました。
パラダイストビヘビの体のあちこちには赤外線を反射するテープが張られ、用意されたオークの木から飛び立つ様子は、23の高速カメラによって追跡されました。
その後研究者はヘビの動きをコンピューターでシミュレートするために、131回行われた滑空実験のデータを、以前の研究で得ていた質量や空気力学に関するデータと組み合わせました。
木の高さを変え何度も行われたシミュレーションは、体をくねらせる動きが到達距離に影響を与えていることを明らかにしました。
動きの影響は木が高くなるほど大きくなり、全ての飛距離の平均は何もしない場合に比べ6.9メートルも延びました。
また地上を這うのと同じような動きが、空中での体の安定に寄与していることもわかりました。
もしヘビが体を動かさなければそのまま落下するだけでなく、打ち所によっては命を落とすことになるでしょう。
ヘビが空中で体をくねらせるのは、遺伝子に刻まれた反射的な行動であるとする考えがありました。
しかしシミュレーション結果は、パラダイストビヘビが、体を安定させ飛距離を延ばすために懸命に体を使っていることを示しています。
パラダイストビヘビの飛行に関する知識は、ロボット工学にも生かされる可能性があります。
研究者の一人であるバージニア工科大学のシェーン・ロス氏は、「ヘビは複雑な環境を移動するのがとても上手だ」と説明し、「この動きを追加できれば、自然環境だけでなく都市環境でも機能する」と述べています。
またソチャ氏は、「このような研究は、自然がどのように機能するかについての洞察を提供するだけでなく、自然に触発されたデザインの基礎を築く」と話しています。
研究結果はNature Physicsに掲載されました。
体をくねらせるとフリスビーみたいな効果が出るんだって
ヘビの飛び方を20年以上研究してきたというのもすごい……
References: Phys.org