新しい研究によると、これまで1種類しか確認されていなかった「電気ウナギ」に新たに2種類の新種が加わることになります。
中でも「Electrophorus voltai」と呼ばれる電気ウナギは最大で860ボルトもの電気を発生させることができ、これは通常の電気ウナギが発する650ボルトを遥かに超える値であることから特に注目されています。
電気ウナギの発見とその発電メカニズムは、1799年に発明された最初のバッテリーにヒントを与えました。
新たな種類の電気ウナギが発見されたことで、アマゾン流域の生物多様性に再び大きな関心が集まっています。
3種の電気ウナギはそれぞれの生息場所に適応するよう進化してきた
低地に生息する新種の電気ウナギ「Electrophorus varii」 Credit:D. Bastos
ブラジル、スリナム、ガイアナを含むアマゾン地域に生息している電気ウナギはこれまで1種類だけで構成されると信じられてきました。
しかし南アメリカの遠隔地の野生生物をマッピングするプロジェクトを主導した、スミソニアン国立自然史博物館の動物学者デビッド・デ・サンタナ氏のチームは、アマゾン川流域の様々な場所から収集した電気ウナギのDNAを調べ、そこに複数の特徴があることを発見しました。
107個あったDNAは3種類に分けられ、これまで確認されていた「Electrophorus electricus」の他に「Electrophorus voltai」と「Electrophorus varii」という2種が存在することがわかりました。
これら3種の電気ウナギはそれぞれ生息している地域が異なります。
E.electricusはギアナ・シールド(楯状地)地域、E.voltaiはブラジリアン・シールド地域の南の高地に、E.variiはゆっくりと流れる低地アマゾン流域に生息していました。
またDNA調査は、この3種が数百万年前に同じ祖先から枝分かれし進化したことも突き止めています。
最大で860ボルトもの高圧の電気を放出したE.voltaiは、他の種よりも高地に生息していました。
研究者はE.voltaiが発する強いレベルの電気ショックは、導電性の低い高地の生活への適応によるものだと考えています。
それぞれの環境に適応した進化を遂げた電気ウナギの発見は、アマゾン地域での種の多様性について再確認させるものです。
人間による過去50年のアマゾンの熱帯雨林への影響にも関わらず、今回の2種類の新しい電気ウナギのような発見があります。
サンタナ氏はこのように述べ、アマゾンには発見を待っている種がまだまだあり、それらが多くの病気の治療法や技術革新を促す可能性さえある、とアマゾン保護の必要性を訴えました。
電気ウナギは厳密にはウナギではなく魚類に分類されます。
彼らは獲物を狩ること以外にも、身を守ることや移動する際にも電気ショックを用います。
人間を含む大型の動物でさえ命を奪えるほどの高電圧は、後に人類がバッテリーを発明するヒントになりました。
また最近では電気ウナギの発電の仕組みが、神経変性疾患の治療に用いられる医療用インプラントの動力源となるハイドロゲル蓄電池の進歩に大きく貢献しています。
アマゾン地域でいまだ発見されていない動植物は、将来の人類にとって大きな恩恵をもたらす可能性があります。
アマゾンの熱帯雨林は気候変動やブラジル政府の政策などにより壊滅的なダメージを受け始めています。
人類が今後もアマゾンの自然から恩恵を受けるには、人間の有害な影響からアマゾン全域を守る必要があります。
References:The Guardian